「ネタだけがストレスだった」と語る芸人・おたけさん。ジャングルポケットとしてコンビで活動を始め、芸道の岐路に立つ今、ある思いが沸々と湧いています。(全3回中の1回)

「有名になりたい」と美容師の道へ

ジャングルポケット・おたけ
生後間もないころのおたけさん

── 芸人になる前は美容師として働いていたそうですね。

 

おたけさん:高校を卒業して美容の専門学校へ入学して、そのまま美容師になりました。高校生のころ、友達の髪の毛をいじったりしていて、興味があったんですよね。当時は、空前のカリスマ美容師ブームで。テレビドラマの『Beautiful Life』が流行っていたり、美容師がカットバトルをする『シザーズリーグ』という深夜番組をやっていたりして。好きな職業ランキングとかあるじゃないですか、当時1位が美容師だったんです。それに乗っかりました。

 

── 流行りや、人気の職業というのが大きかった? 

 

おたけさん:そうですね。結局、テレビに憧れがあったんでしょうね。でも、いわゆる「芸能人」というのは雲の上の存在で。自分がなれると思っていなかったので、そこは目指していなかったんですけど。美容師なら違うラインで有名になれる、っていうのがあったのかもしれません。

 

── 有名になりたかったんですね。

 

おたけさん:有名にはなりたかったけど、昭和世代なんで、今よりも芸能人はもっと遠い存在に見えて。今はYouTubeとかで違う角度から攻め込めるというか、発信できますけど、昔はそういうのなかったので。芸能人はブラウン管の中でしか見られなくて、本当に存在しているのか?みたい感じだったので、憧れはありました。

酔った勢いで「芸人やるか!」NSCに願書を提出 

── どれくらい美容師として働いていたのですか?

 

おたけさん:それが、1年ちょっとで辞めちゃったんです。美容室での仕事に真面目に取り組んでいなかったわけではないんだけど…。持ち前の愛嬌というか、当時から今のこの感じでやっていて。美容師って、めっちゃ練習しなきゃいけないんですけど、それをやらなかったり、仕事中にボイラー室で昼寝しててバレたりとか…。素行が悪かったんです。結局、自分は美容師を本当にやりたかったのかな、とも思いはじめて。「有名になりたい」というのが先だったんで、そこに限界を感じてしまったんです。

 

── 辞めてすぐ、芸人を目指したのでしょうか?

 

おたけさん:芸人を目指しはじめたのは、美容師を辞めて1年後ぐらい。焼肉屋でアルバイトをしたり、フリーターをやってフラフラしていた時期がありまして。そもそも、お笑いって、自分にずっとある感覚だったんです。ふざけたり人を笑わせたりというのは好きだったんで、学生時代もずっとそういう感じでやっていました。ただ、お笑いが好きだったからこそ、自分のなかではお笑いの難しさみたいなものは感じていましたね。

 

── お笑いを本格的に目指すきっかけは、何だったのですか?

 

おたけさん:あるとき、地元の友達とお酒を飲みながら話していたんです。「どうしようかな、これから俺」みたいな感じで。そのときに、酒の勢いもあって「芸人、いくか?」となって。地元の友達でおもろいやつが「NSC(NSC吉本総合芸能学院)っていうお笑いの学校があるよね」と言うんで、調べたんです。

 

そしたら、本当にタイミングですよね。NSCの入学願書締切がたまたま、その日の翌日だったんです。話をしていたのは深夜だったので、明けた翌日が願書締切日。「これ、まだ間に合うけど、明日だぞ?」となり「郵送じゃもう間に合わないじゃん」といって慌てて翌日にバイク便で願書を送りました。

 

── すごい行動力ですね。ちなみにそのとき、おいくつだったんですか。

 

おたけさん:22歳でした。それが1日ズレてて次の日だったら「もう締め切っちゃったじゃん」となって送っていないだろうし、締切の数日前でも、勢いがおさまっちゃって送っていないだろうし。まさに、タイミングだったのかなとは思います。そこから1年間、NSCの養成所での生活が始まりました。