「フェアな立場だから忖度なしで仕事も評価してくれる」と濱田マリさんが語る相手は、すでに成人したひとり娘。2年に及んだ反抗期も経て、いまはつかず離れずのいい関係が築けているそうです。(全4回中の3回)
わが子と一緒に過ごす時間が少ないからこそ密度は濃く
── 俳優の仕事は時間が不規則だと思いますが、お子さんが小さいころはどのように仕事と育児を両立されていましたか?
濱田さん:家族に育児をお願いしたり、ベビーシッターの方に来ていただいたりしていました。周りに頭を下げたり、娘にも「ごめん」と言いながらいろいろな人の力を借りて乗り越えた気がします。それでも仕事はきちんとまっとうしたかったし、私は本当に仕事が好きでやっていたので、自分のやりたいことを優先させていたことに対しては申し訳ないなって感じていました。
でも周りも娘もすごく協力的だったし、娘の口からは寂しいという言葉を聞いたことはありませんでした。幼いながらも「仕事はアジャスト(調整)することが大事」だってことを、肌で感じていたのではないかなと思います。
── 育児で大変だと感じた時期はありますか?
濱田さん:大変だった時期はとくにないけれど、子どもの学校行事などに100%出られるわけではなかったので、それが非常につらかったです。あと急な発熱で「お母さん、お迎えに来てください」っていう連絡がくることがあるじゃないですか。そういうときは、やっぱりドキドキしましたね。
ちなみに、これは自分のなかでのルールなのですが、ずっと一緒にいられるお母さんが子どもといる時間の密度が100だったとしますよね。私もその100を目指したい。でも時間が限られている。だから、一緒にいる密度を上げるために濃密な時間を過ごしたくて。たとえ一緒にいられる時間が少なくても、できるだけ密度は100に近づけようと心がけていました。
── たとえば、どのように娘さんとの時間を過ごされていましたか?
濱田さん:テーマパークの年間パスポートを買って、一緒にいられるときにはとことん楽しんでいましたね。「疲れている?何言っているの!」みたいな感じで遊びまくって(笑)。ふたりでそんな濃厚な時間を過ごしていたと思います。
── 親子仲がとてもよさそうで羨ましいです。子離れの時期は寂しくなかったですか?
濱田さん:娘がメイクに興味を持ったり、アイドルに夢中になり始めたころから、そろそろ子離れの時期かなと感じていました。離れていくのは寂しかったけれど、追いかけはしなかったですね。寂しくても仕事に打ち込めると思ったし、そのぶん趣味にもハマっていった気がします。
── 娘さんが反抗期のときはどのように接していましたか?
濱田さん:うちの場合は、暴れたりはしなかったけれど、親に向かって「はい。なんですか?」という感じで敬語で話しかけてきたり。「めっちゃ傷つくわ…」って内心思っていましたが、それも2年ほどで終わりましたね。きっかけは本当に単純で、家で猫を飼うことになったんです。
── 家族が増えたのですね。
濱田さん:猫がやってきてからは、いわゆる思春期っぽい言動はすぐになくなりました。ずっと育児エッセイの連載をしているのですが、そこでは、娘のことを長女、猫のなっちゃんを次女って呼んでいます。なっちゃんには「チュール(猫のおやつ)があるから、お姉ちゃんにもらっておいで」と声をかけたりして。娘はひとりっ子ですが、なっちゃんを妹みたいな存在って感じていると思う。それくらい仲がいいですね。猫がわが家に来て本当によかったと感じます。