「クラウンToKa & KoTa」としてともにパフォーマンスをしている岡崎賢一郎さんとダウン症の佐々木虎太朗さん。周囲から批判的な目で見られることもあるそうですが、「虎太朗くんから与えられるものは大きい」と語ります。(全2回中の2回)
クラウニングに「失敗」ということはない
── クラウンの指導はどのようにされるのですか。
岡崎さん:クラウンの動きをクラウニングというのですが、クラウニングには教科書がないんですよ。もちろん、動画などを見て勉強することはできるので、どういうものを見ればいいかは教えていますが、指導はしません。いろんなところへ行って、いろんな人に会ってセッションをして、経験を積むしかない。
クラウニングは、「自分の苦手が誰かの得意であればいい」という世界です。たとえば虎太朗くんはまだジャグリングが苦手ですが、得意な僕がやればいいと考えます。
それに、クラウニングにはそもそも「失敗」ということがありません。クラウンの動きは、子どもと同じなんです。たとえばクラウンがボールを落としたら、そこにいる子どもが拾いたがって、クラウンと取り合いになる。そこからやりとりが生まれて、クラウニングが始まります。ネガティブな要素がないんですよね。
── すてきですね。では、佐々木さんにとって岡崎さんは「師匠」というよりは…。
佐々木さん:パートナーです。パートナーというより、僕から見るとマネージャーみたい。
岡崎さん:ははは。
── 岡崎さんにとって、佐々木さんはどんなパートナーですか。
岡崎さん:僕は単独での活動もしていますが、1人ではできないことが2人だとできるようになるので、世界が広がりますね。 虎太朗くんが出演するときは、見に来てくれるお客さまの層も変わりますし。特に障がいのある人たちの前でパフォーマンスをするときは、虎太朗くんがいてくれるとすんなり溶け込めるんです。
虎太朗くんと一緒にやっていると、「ダウン症を利用している」と言われることもありますが、誰にどう思われても、僕にとっては「友達のやりたいことをサポートしている」という感じです。僕が虎太朗くんに与えているのではなくて、僕が虎太朗くんにもらっているものも大きい。持ちつ持たれつです。
みずからアイデアを出して2人のやりとりを演出
── 練習は大変では?
佐々木さん:棒を使うジャグリングが難しくてなかなかできないんですけど、助けてもらって練習しているんです。賢一郎さんが支援してくださるので、うれしいです。僕は小学生のころに始めたけん玉が得意で、最初は小さいけん玉でやっていたんですけど、親からサプライズで大きいけん玉をもらって、感動したんです。そこから、大きいけん玉でパフォーマンスができたらいいなと思ってやっています。「けん玉クラウン」もいいかな、と思って。
── 佐々木さんから「こんなことをやりたい」というアイデアが出てくることもあるのですね。
岡崎さん:そうですね、多いですよ。たとえば、2人でいすを取り合うやりとりがあるんですけど、ほとんどが虎太朗くんの演出です。
佐々木さん:いす取りゲームで結局、僕が賢一郎さんを押して座るというのは僕のアイデアです。あとは、賢一郎さんがジャグリングをするときに、バルーンを持っていって邪魔をする。取り合いになって、みんなが笑う。
── そういうアイデアはどうやって思い浮かぶのですか。
佐々木さん:YouTubeで「クラウン」「道化師」を調べて、真似してみたりします。
岡崎さん:YouTubeで見たいろいろな動きを混ぜてアレンジするんですよ。
佐々木さん:これからパフォーマンスでもうちょっとおもしろくさせたいなと思います。