ダウン症の佐々木虎太朗くんと「クラウンToKa & KoTa」として活動をする岡崎賢一郎さん。コンビ結成のきっかけは虎太朗くんからの申し出だったと言います。(全2回中の1回)
自分が生きていくうえで必要なものを感じた
── 岡崎さんはクラウンとして活動されています。クラウンは日本ではあまりなじみがないのですが、どのようなパフォーマンスなのでしょうか?
岡崎さん:クラウンは、日本では「道化師」や「ピエロ」といわれますが、本来はもっと幅広い位置づけです。ジャグリングなどのいわゆる大道芸を見せるクラウンもいますし、「ホスピタル・クラウン」のように心のケアをする人もいます。クラウンはその場の空気を作る存在ですけれど、あくまで脇役で、主役はお客さまです。
── 岡崎さんがクラウンを始められたきっかけは。
岡崎さん:6年ほど前、以前勤めていた会社の講演会で、闘病中の子どもたちを相手に活動する「ホスピタル・クラウン」として有名な大棟耕介さんのお話を聞いたことがきっかけです。すぐに「やりたい」と思って、クラウンの入門講座を受けました。どうしてやりたかったのかはよくわからないですね。人間的に自分にたりない部分を補ってくれる予感がしたんですよね。「人を喜ばせたい」というより、自分が生きていくうえで必要なものを感じたというか。
仕事をしながら勉強するうちにもっとやりたくなって、アメリカにあるクラウンの学校でも勉強しました。世界中から変人が集まっているので、目立たないようにしている人がいちばん目立ってしまっていました。日本人は僕ひとりでしたね。
── どんなことを勉強するのですか。
岡崎さん:初めて会った人と話をして、お互いに相手の自己紹介をするとか、ステージの上に20分かけて上がって、そこで物語を作るとか。おもしろかったです。
日本ではクラウンというと「ピエロ」や「大道芸」のイメージが強いと思いますが、欧米ではしっかりした位置づけでリスペクトされています。学校教育にクラウニング(クラウンの動き)を取り入れている国もあるんですよ。
クラウンって実は奥が深くて、コミュニケーション能力が身につきますし、自分に自信が持てるようになって、他人により優しくできるようになります。僕もそうですが、クラウンのときの自分と普段の自分が混ざってきて、電車の中で小さい子どもが泣いていると、つい近づいてしまいます。ちっちゃいことですけれど、そうやって思いやりが連鎖していく気がします。
── クラウン的要素は、大人にこそ必要かもしれないですね。
岡崎さん:でも、大人向けには難しいです。企業の管理職向けに、コミュニケーション力を高めるための講座をやったこともありますが、コミュニケーション以前に、発言してもらうまでに時間がかかりました。たとえば、「何か質問がありますか?」と聞いたとき、日本では手を挙げず、何も発言しないことが意思表示になってしまう。コミュニケーションを取る前に、自分の殻を破ってもらうことが難しかったですね。