下積みがないままブレイク「自分はもっとやれるはずなのに」
── デビュー後、ほぼ下積み期間がないままにブレイクしましたが、ご自身としての芸人としての原点になった出来事はなんだったのでしょうか。
アンゴラ村長さん:何だろう。原点になった経験は、いろんな段階があると思っていて。たとえば、ライブで縄跳びネタを始めてやったときや、キングオブコントで準優勝したときは、「このネタでいちばんウケたんじゃないか」って感覚はありました。ただ、すごく笑ってはもらえるんですけど、自分のなかで「これがいちばんおもしろいネタだ」とは思ってなかったんです。
── そうだったんですね。めちゃくちゃウケてましたが…。
アンゴラ村長さん:キングオブコントでは、たくさん笑ってはもらえたんですけど「自分はもっとお客さんに笑ってもらえるネタをやれるのに」という気持ちもあって。そこからかなりテレビの出演回数が増えたのですが、その後いろいろあってテレビ出演が減ったりして。そういう経験を経て、2019年に漫才協会に入ったんです。
あるとき、漫才協会のライブで、自分たちのことをイジったんですよ。「破局しました~」「最近テレビで私たち見ましたか?」とか。そのときに、お客さんが笑ってくれて。それで「よかったなぁ」って気持ちになった自分にビックリしたんですよね。
── 自分たちの境遇を笑いに変えられた、というか。
アンゴラ村長さん:ネットで誹謗中傷的な感じで「にゃんこスターって最近見ないよな」とか言われるのはイヤなんですけど…。ただ、劇場に来てくれたお客さんが笑ってくれるためのひとつの手段としてなら、別にいいと思える自分がいたんです。そういうネタってわかりやすいし、お客さんが笑いやすいんですよね。笑ってくれるなら自分の過去やネガティブなことも削ったっていいと思っている自分に気づいたとき、私って芸人なんだとあらためて知って。なんて言うんですかね。それが、今の自分になるための原点だったのかな、って感じがします。
── 素敵ですね。縄跳びネタのようなリズムネタは、当時コアなお笑いファンからは叩かれやすかったように思います。SNSの誹謗中傷も多かったのでしょうか。
アンゴラ村長さん:そうですね。でも私は「叩かれてるかも」って思ってからは、SNSをあんまり観なくなったんです。なので、一時は落ち込んだこともあったけれど、ここ数年、心は健康な状態でやっていけています。ただ、3助さんはエゴサが好きで、そういうのをしょっちゅう見てるので…。「気にしてない」とか言いつつも、アンチコメントばっかり見ているので、最近はかいわれ大根みたいな感じになってきちゃって。
ライブで「こういうアンチコメントがあって~」とネタにすると、ウケたりもするんです。ただ、私はもう、そういう笑いは別にいいやって。そういうのを見ないで、自分の世界だけで生きていこうかなって思っているんです。3助さんの不健康さを見ていると特に…。シワシワで、細くって、真っ白になっちゃってるんで…(笑)。本当に見ないほうがいいですね。
PROFILE アンゴラ村長さん
あんごら・そんちょう。2015年、早稲田大学在学中にデビュー。17年、スーパー3助とお笑いコンビ「にゃんこスター」を結成、同年のキングオブコントで準優勝しブレイク。今年5月には、初のデジタル写真集『151センチ、48キロ』(講談社)を発売し、話題に。
取材・文/市岡ひかり 写真提供/アンゴラ村長