批判が「特効薬」になる場合も

24歳のときの愛華みれさんと母
24歳のとき。舞台を見に来てくれた母と

── 宝塚での経験を通じて心の支えとなったものは何でしょうか?

 

愛華さん:何があっても必ず舞台に立たなければいけないという覚悟だったと思います。毎日、3000人もの観客の前に立って、その後にはたくさんの感想が寄せられる。その「嵐」のような反応のなかで、自分らしさを保ち続けるメンタル力が自然と培われていきましたね。

 

たとえば「あなたは鼻が曲がっているわよ」「眉毛が左右違うわね」「声が枯れていますね」など、率直なご意見をいただくこともある。でも同時に「それが素敵です」「そのハスキーな声が魅力的」と言ってくださる方もいて。その方たちのために頑張ろう、笑顔を届けようと、そうやって前向きなことを見つめていく習慣がついていきました。

 

── 今は、周囲からの意見や批判を恐れて、なかなか挑戦に踏み出せない若い方も多いかと思います。

 

愛華さん:私の経験からお伝えしたいのは、意見をくださる方はそれだけ自分のことを見てくださっているということ。あえて自己肯定をして少しうぬぼれてとらえてみれば、厳しい意見を言われる人は自分では気づかない部分に目を向けてもらっているんですよね。

 

私も宝塚で「何が素敵なのか」を、周りの声を通して学んでいきました。だから批判的な意見を受けたとき、すぐに「ダメだ」と蓋をしてしまうのではなく、「これは本当にマイナスなのかな?」と立ち止まって考えてみる。そうすると新しい発見があるんです。

 

── 受け取り方次第で、自分の感情が豊かになったり、景色が広がったりと。

 

愛華さん:そうですね。人との出会いはさまざまな感情を生み出してくれます。誰かと出会わなければ「悔しい」という気持ちも知らなかったかもしれないし、また別の方との出会いが「こんなに笑える日が来るなんて」という喜びをくれたり。人と人との化学反応って本当に不思議なもので。ときには困難に感じることも、あとから振り返ると大切な糧になっていることが多いんです。

 

たとえば「ダメだ」と言われても、「いつか必ずその人を振り向かせてやる!」という気持ちで頑張れば、それが特別な力になる。私の場合、周りからの声を「毒」と考えるのではなく、むしろ自分を成長させてくれる「特効薬」だととらえ直すようにしてきました。そうすることで、どんな経験も自分らしく受け止められるようになったのかもしれません。

 

もちろん、苦しくなることを無理して受け入れてくださいとは思わないけれど、周りの声を新しい気持ちで受け止めることもひとつの方法ですよね。

 

25歳のときの愛華みれさん
25歳のとき。真っ赤な振袖を着て記念撮影

PROFILE 愛華みれさん

あいか・みれ。女優。1964年11月29日生まれ、鹿児島県出身。元宝塚歌劇団花組の男役トップスター。ホリプロ・ブッキング・エージェンシー所属。ミュージカルはもちろん、MCや声優にもチャレンジするなど多角的に活動を続けている。

写真提供/愛華みれ