車いすユーザーでモデルとして活躍する葦原みゅうさん。今夏初めて『24時間テレビ』(日本テレビ系)に出演し、タレントとともに旅ロケをする姿が「車いすユーザーのリアルな日常を知れてよかった」と好評でした。これまで出演を断り続けていたというみゅうさんが、初出演を通じて伝えたかったこととは。(全3回中の3回)

断り続けていた『24時間テレビ』に初出演

葦原みゅう
モデルの仕事のほか、テレビへの出演も増えているみゅうさん

── 今年の夏、初めて『24時間テレビ』に出演されました。当番組はチャリティー番組として長年の実績がある一方、寄付金の着服トラブルがあったり、演出が「感動ポルノ」と揶揄する人もいたりと、さまざまな意見があります。出演して率直にどのように感じましたか。

 

みゅうさん:実はずっと『24時間テレビ』の出演を断っていたんです。おっしゃるように演出にさまざまな意見があったり、寄付金の騒動もあったりしたので、同じ見られ方をしたくないという思いがありました。

 

それに『24時間テレビ』の企画と言えば、山に登ったり、海を泳いだりして「障がいがある人がチャレンジする」という企画の印象がすごく強かった。もちろん、あくまで企画自体の問題であり、他の出演者の方にそんな意識はないかもしれませんが…。でも私はそもそも、障がいがあるから何かを頑張りたいという意識はなくて。「女性として頑張りたい」とか「モデルや発信者として頑張りたい」という思いはあっても、「障がい者だからこれを頑張りたい」という意識はないんです。

 

── たしかに『24時間テレビ』は「障がいを乗り越えてチャレンジしよう」という企画が多い印象があるかもしれません。みゅうさんは別に乗り越えようとしているわけではない、と。

 

みゅうさん:そうなんです。まず障がいを壁に感じてないので。「障がいがある私がこれに挑戦します」という趣旨のオファーは、私には合ってないなと思って断っていたんです。

 

ただ、今年オファーをいただいたときは「みゅうさんは何をやりたいですか?」と聞いていただけて。私がしたいことをテレビで発信できるんだったら、それはありがたいチャンスだと感じました。そこで「旅ロケがしたい」「車いすユーザーの日常の姿を見てほしい」と企画提案をしたら、それがそのまま通ったんです。

 

いとうあさこと葦原みゅう
今年放送の『24時間テレビ』では、いとうあさこさんと車いすで旅する企画に挑戦

── タレントのいとうあさこさんと旅ロケをする、という企画だったそうですね。

 

みゅうさん:そうですね。お昼の情報番組の旅コーナーみたいなタッチで編集していただきました。もちろん、障がいがあって何かに挑戦したいと思っている方にとっては、番組の協力があって実現できることもあると思います。家族のサポートだけじゃできないことも、大勢のスタッフのサポートがあればチャレンジできる。それはそれで素敵なことです。ただ、それだけだと、障がいがある視聴者にとっては、結局は非日常じゃないですか。今回はテレビのサポートがあったから実現できたけれど、逆に言うと「サポートを受けられない自分にはできない」と思ってしまうんじゃないかなって。

 

私が出演した旅ロケでは、車いすユーザーが街に出るときはどうしているのか、車いすユーザーはまわりからどう見えるのかを、あさこさんに体験してもらったんです。番組スタッフの方も、私が出演することによって「車いすでロケバスに乗れますか」「どこでどう段取りしたらいいですか」などと聞いてくださり、いろいろと知ってもらえました。

 

同じ障がいがある人からは「自分たちの過ごしている目線をテレビで発信してもらえてありがたかったです」「車いすになってから出かけなくなっていたけど、旅行したいと思えるようになりました」といった声もありました。障害がない方には新しい発見を得てもらえたし、障がいがある方には同じ目線を発信したことを感謝してもらえたと感じて、私としては本当に出演してよかったなと思っています。

「車いすモデル」という肩書きに感じるモヤモヤ

── 逆に、出演してみて、メディアのあり方に疑問に思ったことはありましたか?

 

みゅうさん:そもそも今、車いすでモデルとして活躍している人は多くはないので、私がメディアに出演するときはたいてい「車いすモデル」という肩書きになります。でも、自分から「車いすモデルです」と言ったことはなくて。たとえば下着のモデルが「ランジェリーモデル」と表現されるように、車いすのためのモデルだったら「車いすモデル」でもいいと思うけれど、それとは違うというか…。

 

葦原みゅう
ハロウィンコスプレに挑戦!テーマは「パパ活するJK」だそう(笑)

まだまだ車いすユーザーでモデルとして活躍している人が少ないから、メディアでは「車いすモデル」ってキャッチなワードを使うとわかりやすいとは理解しているんです。ただ、車いすでいることが当たり前になれば、わざわざ「車いすモデル」なんて言わなくてもよくなりますよね。たとえば「次世代モデル」とか、もっと言えば「葦原みゅう」という名前だけでいい。「車いすモデル」と呼ばれるたびに、私もまだまだだなと思います。

 

今、社会で「多様性」が叫ばれているのも、つまりは多様性がある社会じゃないから、ですよね。「多様性」という言葉をあえて使わなくても多様性がある社会になっていくことを目標に頑張りたいです。