長男・湊くんの自閉スペクトラム症を公表した倉持由香さん。障害児育児で「好きな仕事が続けられなくなるかも」と思ったこともあったそうですが── 。(全3回中の3回)

凹をならそうとするより、凸を伸ばしていく

倉持由香さんと長男
赤ちゃん時代の長男・湊くん

── 湊くんの育児で心がけていらっしゃることはありますか。

 

倉持さん:私も夫(プロゲーマーのふ〜どさん)も好きなことをして生きているので、息子の湊にも好きなことを見つけてほしいと思っています。言葉が出なくても「これが好き」というものは、キラキラした目で見つめているからわかるんですよね。公園でアリを見つけたときとか、虫の図鑑を見ているときとか。今は虫や生き物に興味があるみたいです。

 

定型発達の子でも多少の凸凹はあって、努力して凹を埋めていると思うんです。湊もそうですけど私と夫も凸凹が激しくて、好きなことは頑張れるんですが苦手なことは頑張れない。どっちも苦手な事務作業はふたりで押しつけあっています。だいたい私がやりますが(笑)。

 

私は子どものころから、毎日同じ時間に同じ場所へ通うことができなくて、小学校5年生くらいから小・中・高・大と不登校でした。勉強も、好きな科目は満点近く取れるけど、興味のない科目は全然頭に入らなくて、センター模試で6点…と、できることとできないことの差が大きくて。ときどき「グラビアなんてやって、親は泣いているぞ」などと言われることがあるんですが、不登校で引きこもっていた時代にたくさん心配をかけてきたから、泣くどころか私が外に出て好きな仕事をして収入を得ていることを両親は喜んでいます!(笑)『週刊プレイボーイ』の表紙になったときも嬉しそうに「コンビニに並んでたよ、おめでとう」と報告してくれましたね。

 

だから湊のことも、何とかして凹を平らにならそうとするよりも、得意な凸をどんどん伸ばしていくのがいいんじゃないかと思っています。

好きな仕事をするために、苦手なことは便利なサービスに頼って

倉持由香さんとご家族
3歳おめでとう!七五三の記念ショット

── たしかに、好きなことは支えになりますよね。

 

倉持さん:私は仕事が好きで20年間打ち込んできたので、湊が自閉スペクトラム症と診断されたとき、「仕事ができなくなるかもしれない」と思うとつらかったです。

 

もちろん仕事を辞めることを選ぶ方も、辞めざるを得ない方もいらっしゃると思うんですけど。私は仕事をして稼いで、苦手なことはお金を払って便利なサービスに頼るほうが自分に合っていると思います。だから今、夫の実家や事務所やマネージャーさんの協力のおかげもあって、仕事を続けさせてもらえてありがたいです。

 

湊は、平日は保育園に預かってもらっていますし、週2回、家事サービスのサブスクも利用しています。うちがお世話になっている家事代行サービスは「これぞ主婦の鏡」と言えるベテランの方で、いつも同じ方が来てくださるので、すごく助かっています。家族の好みに合わせて料理を作ってくださるし、湊もべったり懐いてるし。和服の着付けができる方なので、今年の夏は浴衣を着付けてもらっておでかけもしました。衣替えをお願いしたときは、衣装ケースに「ふ~どさん冬服」「湊くんの夏服」とラベルを作って貼ってくれていて感動しました。本当のお母さんみたいに感じています。「餅は餅屋」じゃないですけど、それぞれが得意なことや好きなことで稼げたらwin-winだと思います。

 

── パートナーのふ~どさんもサポートしてくださいますか。

 

倉持さん:夫は、妊娠したときから当事者としてずっと一緒に向き合ってくれているので、「手伝う」とか「サポートする」というスタンスではないですね。ミルクだったこともあって、育児で私にしかできないことはないから、生後9か月のころ、夫の友だちだけで湊を連れて奈良県まで旅行したこともあります。

 

夫は効率を求める性格なので、産まれてすぐの2、3時間で起きてしまう新生児期は「ふたりして寝不足になってしまうのはよくないから、昼番と夜番に分けよう」と、夫が昼夜逆転生活にしてくれて、完全シフト制にしていました。産後、身も心もボロボロのママがひとりで寝不足になって育児をしたら、壊れてしまいますよね。寝不足のときの赤ちゃんの泣き声って、わが子でもキツいものがあります。ふたりの子どもなんだから、パパは「手伝う」立場ではなくてふたりで育てないと!ということは、声を大きくして言っていきたいですね(笑)。

 

生後9か月くらいのころ、離乳食が3回食になったのに湊がなかなか食べてくれなくて。せっかく準備したのに床にバーンとぶちまけるので、私がイライラしてしまったことがあったんです。でも、夫が「食べないならミルクをあげればいいよ。ミルクは栄養満点だよ。そのうち食べるんだから、親がカリカリするほうが湊にとってよくないよ」と言ってくれて、気持ちがスッとラクになりました。

 

夫は手料理へのこだわりがまったくないので、私も「作りたいときは作るけど、気がのらないときは宅配や冷食、外食にしよう!」と思っています。離乳食もそうですよね。自分ですりおろして小分けして冷凍保存する作業に達成感を得られる方はやったらいいと思いますが、「疲れていてそれどころじゃないよ!」という方はレトルト離乳食でいいと思います。うちはほとんどレトルトに頼りました。メーカーさんが長年研究して清潔な環境で作ってくださった栄養満点のレトルトを信じていきましょう!(笑)

 

育児ってただでさえ目が離せなくて24時間大変なのに、そんななかで「母乳育児をしないと!」とか「離乳食は手作り!3食栄養バランスきっちり!」なんて強迫観念にとらわれていたら、押し潰されちゃいますよ。湊は自閉スペクトラム症の特性もあり、バナナや素うどん、フライドポテトしか食べない偏食が続きましたが、3歳4か月の今は野菜が入ったハンバーグやハヤシライスもパクパク完食しておかわりするようになりました。たとえ偏食ても「バナナでもポテトでもいい、何か食べてくれたらヨシ!」という気持ちでいてほしいです。

 

育児でいちばん大事なのは、親のメンタルだと思うんですよね。親のメンタルが安定していることが子どもの健やかな成長につながります。いまは便利なアイテムがたくさんあるので、うまく活用していきましょう!