子どもを授かるまで9年。流産や不妊治療などを経て、待望の第一子も陣痛から27時間後に出産した(株)アンドエーアイの西真央さん。本人にしかわからない苦労があるなか、令和時代のパートナーとの関係の気づき方には、たくましさがありました。(全3回中の3回)

妊娠しづらい体とわかって「不妊治療を2年」

西真央さんとご家族
夫もIT企業を経営。「起業家同士でライバル心もあります(笑)」

── 24歳で「多嚢胞性卵巣症候群」が判明し、不妊治療を経験。結婚9年目でお子さんを授かられたそうですね。

 

西さん:現在2歳になる子どもがいます。結婚9年目で不妊治療による体外受精(顕微授精)で子どもを授かりました。その過程で2度の流産も経験しています。もともと22歳で結婚した当初から「子どもを早く産みたい」と思っていたんです。ところが、2年経っても授からないので病院で診てもらったところ、「多嚢胞性卵巣症候群」だと判明。人よりも女性ホルモンが少なく、そのせいで妊娠しづらいと言われ、24歳から不妊治療を開始しました。最初に通っていたのは有名クリニックでしたが、流れ作業的な対応に違和感があり転院することに。

 

そこからタイミング療法、注射による排卵コントロールなど、いろいろとトライしましたが、妊娠には至りませんでした。不妊の明確な原因がわからないと言われていたので、いろんなことをひとつずつ試していくしかない。このまま続けていても授かるのかどうかわからない。終わりが見えない状況に苦しい気持ちになることもありました。

 

── 不妊治療中は、メンタルがネガティブに傾きがちになりますよね。

 

西さん:夫は結婚前から、「できれば子どもは9人くらいほしい」なんて冗談を言っていたくらい子ども好きだったので、すごく申し訳ない気持ちになってしまいました。また、口には出さなくても初孫の誕生を待ち望んでいる親たちに引け目を感じて心が苦しくなることも。ですが、そんな私の様子に気づいた夫が「自分たちの人生なんだから、他人のことをそんなに気にしなくていい。もしも子どもを授からなかったら、そのときは2人で生きていくのもいいよね」と言ってくれ、気持ちがずいぶんラクになりました。

 

── その後、体外受精を経験されました。

 

西さん:初めてチャレンジしたのは28歳のころです。24歳で不妊治療を始めて2年くらい経ったころ、成果も出ないし、ちょっと精神的に苦しくなって、いったん治療をお休みしたんですね。ちょうど起業したばかりで、仕事もすごく忙しい時期でした。

 

── 不妊治療と起業が重なる状況はとても大変そうです。旦那さんも心配されたのでは?

 

西さん:会社を立ち上げたことは夫には内緒にしていたんです。うちは夫もIT起業の経営者なのですが、私の会社は1年目の売上がゼロだったので、バカにされるのが嫌で(笑)。成果を出してから報告しようと思っていたので、2年目に売り上げが出るようになってから、「じつは…」と伝えました。

「妊娠までトータル4年かかりました」陣痛から27時間の出産

── 起業家同士として、夫婦でもライバル心があるのでしょうか(笑)。

 

西さん:ライバル心は、いまでもありますよ(笑)。打ち明けたのは、売上げが立つようになったからというのもありますが、経営のアドバイスがほしかったから。いまでは、いろいろと意見やアドバイスをもらっています。

 

── その後、不妊治療を再開されています。

 

西さん:やはり子どもをあきらめられず、1年後に不妊治療を再開し、凍結胚移植による体外受精を何度か行いました。当時はまだ金額が高く、1度の採卵には50万円ほどかかりましたね。1年かけて何度かトライした結果、無事に子どもを授かることができたのですが、あのときの喜びはいまでも忘れられません。2年間のお休みをはさんでいるので、不妊治療の期間はトータルで3~4年くらいでした。出産は陣痛が始まってから、27時間もかかりました。なかなか生まれなかったので、子宮口を開くためにバルーンを入れたのですが、吐き気がして気持ち悪くなったことを覚えています。

 

出産直後の西真央さん
出産直後。生まれるまで27時間かかったそう

── 出産された2022年は、ちょうど起業5年目でビジネスが軌道に乗り始めた時期でしたね。かなりお忙しかったのでは?

 

西さん:そうでしたね。病院のWi-Fiがほぼ使えない状態だったので、すぐにポケットWi-Fiを契約し、出産ギリギリまでweb会議をしていました。