落語は「想像芸」

鹿児島で行われた落語会での三遊亭あら馬さん
鹿児島で行われた落語会「余命宣告」

── 落語を教育に取り入れる活動とは、具体的にどのようなものですか。

 

あら馬さん:小学5年生の国語の教科書に落語の単元があるのに、多くの子どもたちは実際に落語を見たことがないので、そもそも落語のイメージが頭に浮かばない。実際に触れることで生の落語を聞いて、体験することで将来への職業の選択肢も増えるし、知識も増える。全国の小中学校のみならず小規模校、鹿児島の離島まで訪問して落語教室をしているんです。

 

こうした活動を続けるなかで、落語が子どもたちに与える影響の大きさを実感しました。たとえば、私の下の娘は落語のおかげで国語力が伸びて、高校で学年1位になったこともあるんです。特別支援学級の子どもたちが「あら馬さんに弟子入りしたい」と、落語を学びに来て学習発表会で披露してくれたときは嬉しかったですね。

 

── 落語が子どもたちの想像力に与える影響は大きいんですね。

 

あら馬さん:そうなんです。今の子どもたちは、YouTubeや映像で情報を得るのに慣れていますよね。スマホで何でもすぐに見られる時代なので。でもそれって想像力を妨げてしまうと思うんです。落語は「想像芸」。言葉だけで自分で場面をイメージする必要があります。この力は、視覚情報に頼りがちな今の時代だからこそ大切だと思うんですよね。

 

落語を披露する三遊亭あら馬さん
落語を披露する三遊亭あら馬さん

── 家庭で落語を楽しむコツはありますか?

 

あら馬さん:ぜひ寄席に足を運んでほしいです。テレビやラジオだけでは実感が湧かないからおもしろさが伝わらない。生で見れば落語家の表情やその場の空気感を感じられて子どもたちの反応が全然違うんですよ。AKBが「会いに行けるアイドル」で人気が出たのと同じだと思いますね。

 

── やはり生で見ることがいいんですね。

 

あら馬さん:そうですね。学校寄席で伺うと真面目な学校さんで、最初に先生が「静かに聞きなさい」「黙って聞きなさい」と言うんです。でも、落語は笑ってもらわないと困るんですよ。そんな時は開口いちばん私が下ネタを言って子どもたちを大爆笑させます。普段、大人がそんな言葉づかいするの見たことないでしょ(笑)。

 

最初は「落語って何?」と興味がなかった子でもどんどん引き込まれていって、目をキラキラさせて「おもしろかった」と言ってくれるんです。子どもたちは大人が思っている以上に、新しいものを受け入れる力がある。落語を通じて「言葉遊びっておもしろいんだ」と気づいてくれたらいいですよね。

 

PROFILE 三遊亭あら馬さん

さんゆうてい・あらま。落語家。女子大生タレント、ラジオパーソナリティ、コンサル会社総務、フリーアナウンサー、劇団スーパーエキセントリックシアター研究生を経て、2017年、三遊亭とん馬に入門し落語家に。2021年5月に二ツ目昇進。2019年杉並区立小学校PTA連合協議会会長。2022年11月より宝島社女性ファッション誌『GLOW』専属読者モデル。2023年4月、フジテレビ『めざまし8』、2024年9月、NHK『視点・論点』でPTA会長4回経験の解説者として放映。2024年10月より調布FMレギュラーとして出演。

写真提供/三遊亭あら馬