障害のある人の現状や日常を知っている方を増やしてから死ななきゃ

桜井奈々さんとお子さんたち
飛行機に落ちついて乗れるようになり徐々に旅行が増えた

── 桜井さんは12万人のフォロワーを抱えるブロガーとしてもご活躍ですが、ブログには娘さんのことを積極的に発信していらっしゃいます。

 

桜井さん:娘の障害が発覚した当時、一番知りたいのは「この先どうなるか」ということでした。同じ状況の先輩ママの話、特に女の子の障害は探しても見つけられませんでした。どこにもないから私がブログで発信を始めたんです。

 

でも、ブログを始めたいちばんの理由は、親亡き後のためです。「障害に興味を持ってくれる人と助けてくれる人をひとりでも増やしてから死ななきゃな」って。

 

── ブログでは娘さんのリアルな失敗談などもユーモラスに書いていらっしゃいますね。

 

桜井さん:言い方が難しいですが、毎日が茶番と言いますか…(笑)。「こんなことあった」と悲観するより、ネタにして笑い飛ばしてのりきるしかないなって。以前通っていた病院で、障害がある子の保護者を集めて先生とディスカッションすることがあったんです。そのときの女医さんが本当にサバサバした先生で「何事もおもしろがってやらないと。真面目に受け止めていたら自分のメンタルが壊れるから、笑い飛ばすくらいがいい」っておっしゃって。そのときに「なるほど」と。実際に保護者のなかには精神科に通院されている方もいらっしゃるので…。この女医さんとの出会いとあの日の話があったから、なんとか楽しく生きてくることができました。

 

桜井奈々さん
桜井奈々さん

── まさにブログにそれが表れていますね。

 

桜井さん:そうですね。先日もこんなことがありました。娘は鍵の紛失が多いので、スマートフォンで探し物が見つかる「AirTag(エアタグ)」をつけておいたら、それをはずして家に置いて出かけていました(笑)。もう「意味ないじゃん!」って笑うしかない。いろんな事件が毎日のように起こるんです。どうにもならないことを悩んでもどうにもならない。だったら笑っとけって…。でも、難しい部分はあって、ブログに文章で書くと「娘さんをバカにしてるのでは?」と言われてしまうことも。そういうつもりはまったくないんですけど、これがわが家の日常です。人に伝えるって難しいなと思います。

 

── でも、かつての桜井さんが求めていたように、これから障害児育児が始まるお母さんたちにとっては知りたいことが書かれていて、将来どうなるのかという見通しを立てるひとつの例として貴重な情報源になりそうですね。

 

桜井さん:そうだと嬉しいです。娘が小さかった15年くらい前は希望を見つけることができないなか子育てをしてましたが、いまは当時と違って世の中もある程度フォロー体制ができてきたり、民間が絡んだことで支援サービスが多かったりするので、「なんとかなる。未来を心配しすぎるより目の前の今、今日を楽しむ!」とお伝えしたいですね。とはいえ、私もまだいつも崖っぷちにいますけど、そのスリルを楽しむのも人生だなと、修行だなって思っています。就労から先のことを伝えていくためにも、今後もブロガーとして発信していけたらと思っています。

 

PROFILE 桜井奈々さん

さくらい・なな。ブロガー。1982年10月24日生まれ。東京都出身。18歳の知的障害のある自閉症の娘と6歳男児のママ。障害ある子供の子育てを通して親なき後のために1人でも多くの支援者、協力者が必要と感じAmebaでブログを開設し、日々の子育ての様子を発信中。Amebaでブログのフォロワー数は12万人。

取材・文/加藤文惠 写真提供/桜井奈々