知的障害を持つ自閉症の18歳の娘さんと12歳離れた小学1年生の息子さんの子育ての様子をブログで発信しているブロガーの桜井奈々さん。娘さんに診断がついた15年前は障害児の子育てに関する情報はあまりなく、特に女の子の情報は本当に少なかったから、とブログを綴る思いを明かします。(全3回中の3回)

夫婦での会話は「親が死んだら…」

七五三のお祝いでの桜井奈々さんと娘さん
七五三のお祝いで

── ブログでは知的障害を持つ18歳の娘さんや現在7歳の息子さんとの日々を発信しています。ごきょうだいについてお母さん目線で何か思うことはありますか?

 

桜井さん:息子は新しい今のパートナーとの間に生まれたので娘とは12歳離れているんですけど、2人目を産むときは「次の子も障害だったら…」という怖さはありました。娘が知的障害を持っているので「親亡き後、誰が将来面倒見るの」という話も避けられません。息子に負担を残しちゃいけないなと、親としては「娘のための準備をして死なないといけないな」と常日頃から思っています。

 

でも、つい2か月ほど前に病気にかかってしまって。それも、「トキシックショック症候群」という黄色ブドウ球菌が暴走するなかなかレアな病で、突然生死をさまよいました。娘のことをいろいろ準備して死ななきゃって思っているのに、突然「死」と隣り合わせになってしまい、冷静に「いま死ねない。息子が困る」と。必死に思いましたね。自分の体調が悪くても、もうそこしか考えられない。

 

── 病気が発症したときはどのような経緯だったのでしょうか?

 

桜井さん:駅で倒れ、救急搬送されました。最初は「アナフィラキシーショック」と言われて処置してもらい、その日の夕方に帰されたんです。でも家に帰っても起き上がれず、40度を超える熱。その晩、日付が変わったくらいに「なにかおかしい。もうこれは死ぬ…」と思い(笑)、夫が救急車を呼んだんですけど、その時の血圧が、下が「32」という数値で即、搬送されました。診断の結果、再びアナフィラキシーと診断されてしまい、その処置をされたのですが、あまり改善はなく、次に自己免疫疾患を疑われていろいろ検査をしました。最終的に退院後にも検査をし、ようやく8月下旬に「トキシックショック症候群」と診断されました。

 

搬送時、家族には電話で先生が「3日間が峠です」と言ったほど深刻な病だったんです。5千万人に数人と言われる珍しい病で、病院の先生も一生のなかで診ることがあるかないかだそう。この病は女性の場合、生理用品が原因となる場合が多いそうですが、私は違ったと思います。決定的な原因は不明でした。

 

私はとにかく家のことが心配で何とか早く退院したくて、早くよくなるために毎日、体中の細胞に「よくなれ!よくなれ!」と自分で指令を出してみたり(笑)。それが功を奏したのかはわかりませんが、当初2週間と言われていたところ、なんとか9日で退院できました。

 

── 本当にご無事で何よりでしたね。

 

桜井さん:おかげさまで、いまは体調も戻りました。もう、気をつけようがないんですけど睡眠時間がたりていない生活を見直したり、しっかり栄養のあるものを食べて、ときには甘いものを食べてストレス解消させるようにしようとしているところです。子どもたちも救急車の音に敏感になって。怖い思いをさせてしまったなと。2か月の間に数回、救急車に乗ってしまったので。それでなくても、息子に「お母さん、死んじゃうの?」って心配させたこともあって。

 

── 何があったのですか?

 

桜井さん:先ほども少し話しましたが、私たち夫婦は、親が亡き後の娘のことについてが最大の課題です。「私たちが死んだら…」と話題にしているのを息子に聞かれてしまい、しまったなと。「息子の前で話すときは気をつけないといけないね」と夫婦で反省しました。

 

桜井奈々さんと娘さん
小学生の高学年でようやく海外旅行も困らず連れて行けるように

── 親としてご心配がたくさんあるなか、いろいろと難しいところがありそうですね。

 

桜井さん:情熱を傾けてもどうにもならないことはならないと娘に学ぶこともあります。娘にはいろんなこだわりがあり、本人が心のシャッターを閉めていることに関しては、こじ開けて入っても通じない(笑)。本人のタイミングを待たないといけない。病院で出会った女医さんの言葉が印象的だったんですが「自閉症のこだわりは理論とかではない、つき合うしかない。社会に迷惑をかけない範囲、命に危険が及ばないこと以外はつき合うしかない」と。

 

── 娘さんのこだわりにはどのようなものがあるのでしょうか?

 

桜井さん:たとえば、コロナ禍のころからは手の消毒ジェルを、シャンプー前、シャンプー後、風呂上がり、といった具合に頻繁に使っていました。日焼けをすることに恐怖を感じていて、日焼け止めも過剰に塗りたくります。出先のお手洗いで全身に塗り倒すため20分も出てこなかったり(笑)、洋服もベタベタになって捨てたこともあります。大きい窓があるリビングでは朝ごはんを食べるのを嫌がり、自室で食べています。こだわりは移り変わっていくので、昨日まで大丈夫だったことが今日からはNGということや、その逆もあります。

 

命にかかわることの例では、娘にはすごく偏食があるので、具合が悪いときでも食べられるものや、飲めるものが限られます。昨今の熱中症対策に麦茶を持たせても、適温じゃないと一滴も飲まずに帰宅することも。本人が感じる「適温」に合わせるのが本当に大変です。学校で熱中症ぎみになったとき、保健室で経口補水液を飲めたことがありました。普段スポーツドリンクなど絶対に飲めない娘が、経口補水液を飲めたので、めちゃくちゃ褒めました。まさに命にかかわるものですから。