障害児の子育てに終わりはない。娘が就労しても…
── 障害児を育てる親として、「どういうことを言われると傷つくか」についてご自身のブログに綴っていらっしゃいました。
桜井さん:娘に障害があることを話すと、「障害があっても結婚していたり、就職してる人もいるよ」と、励ます意味で言われることがあります。正直、とても複雑な気持ちになります。「何とかなるよ」と言われても「幼稚園すら入れなかったのに?」と思ってしまう自分がいて…。最初に社会から断絶されたときのことを長く引きずってしまっているのだと思います。よかれと思っていってくださっているのはわかるので余計に気持ちのやり場がなく…。どう受け止めたらよいのかまだ自分の中で答えは出ていません。
高校へ行って、大学へ行って、就職して、といった未来は基本的にはないだろうなというのは娘が幼少期のころから思っていて。大きなテーマとして「親亡き後、どうやって生きていくの?」と常に考えないといけません。
── 娘さんは現在は働いていらっしゃるとのこと。成長された娘さんにいま思うお気持ちを教えてください。
桜井さん:気持ち的に「就労できたら子育てのゴールかな」と思っていましたが、甘かったです。なんとか就職できたと思っても、最初は半年契約ですし。面談が半年後、一年後とあり、継続できるか気が抜けない。障害者就労の中でも知的障害の方はほかの障害の方よりも月給が低く「この金額で生きていけるのだろうか?」と考えます。正直、東京で暮らすのはとても難しいなと。障害者年金も申請しないといけませんし、それすら今後どうなるか当てにならないですし。「そもそも本人が働きたくないと言い出したらどうしよう」という怖さもあり、つねに崖っぷちなんです(笑)。心が休まることはありませんね。
「普通の子育てだってゴールないですよ」って言われちゃうんですけど、いや、普通の子育てのゴールはあると思うんです。普通に子育てしている人が思っている100倍くらい終わりがなくて。常に親は、親亡き後の子の生活を考えて生きてる感じです。
── 美しく成長された娘さんの成人式前撮りのお写真も投稿されてましたね。
桜井さん:髪の毛を切る都合で、前撮りしてお祝いしました。というのも、働きに行くとなると当然ちゃんと朝も遅刻しないようにせねばと。娘はとにかく朝の身支度に時間がかかるので、髪を切って朝の準備に時間がかからないようにするために、就労するにあたって長い髪を切りました。日常を回すためにはいろいろな工夫をしていかないといけない。理論が通じないので「当たり前」が難しい娘にはやはりサポートが必要なんです。
PROFILE 桜井奈々さん
さくらい・なな。ブロガー。1982年10月24日生まれ。東京都出身。18歳の知的障害のある自閉症の娘と6歳男児のママ。障害ある子供の子育てを通して親なき後のために1人でも多くの支援者、協力者が必要と感じAmebaでブログを開設し、日々の子育ての様子を発信中。Amebaでブログのフォロワー数は12万人。
取材・文/加藤文惠 写真提供/桜井奈々