感情的になってしまったときに

── お互いを尊重されている様子が伝わります。夫婦ケンカをすることはありますか?

 

福田さん:昔はよくありました。というより、私が感情的になってしまい、建設的な話し合いができていなかったんです。逆に夫は、冷静に話し合って同じことが二度と起きないように解決したいタイプ。私がプリプリ怒っていると「なぜそのように感じたのか、どうしてその選択をしたのか」を冷静に聞いてくるんです。すると「これって自分のなかで物事を勝手に複雑化させているだけで、実はシンプルなことで怒っていたんだな」と気づいたり、「この気持ちをどう伝えればわかってもらえるのだろう」と考えるきっかけに。そうしたやりとりを重ねるうちに、感情的にならずに自分の気持ちを言語化することができるようになりました。

 

── 怒りの原因を言語化することで、感情のコントロールができるようになったわけですね。いろんな場面で役立ちそうです。

 

福田さん:もちろん日常の些細なことでぶつかることは、今でもしょっちゅうあります。先日、夫がゴミ捨てをした後、空いたゴミ箱にゴミ袋がかかっていなかったんです。「ゴミ袋をかけるところまでがゴミ捨てじゃないの?」と夫に言ったら「家じゅうのゴミを回収してまとめるところまでやっているのだから、最後のゴミ袋ぐらい、気づいたほうがかければよくない?」と返されて。一瞬モヤッとしましたが、確かに言う通りだなと。自分のなかの「常識」を相手に押しつけてはいけないなと思い直しました。お互いが「当たり前」を主張しだすと、ぶつかってしまうだけだから、じゃあどうすればいいかをすり合わせて、そのつどふたりのルールを決めていくことが大事だなと改めて感じましたね。

 

小さなモヤモヤをため込まず、言葉にすることも心掛けていることのひとつです。あまりそう見られないのですが、実は、私は自分に対してネガティブなところがあるんですね。たとえば、夫と出かけるときに「今日の洋服どう?」と聞いて「いいと思うよ」と言われたら、「それって、かわいいわけではないってこと…?髪も服も時間をかけて準備したのにな…」と悶々として、1日の始まりがブルーになってしまうんです。めんどうくさい性格ですよね(笑)。でも、そんなときに「ほら見て。髪もいつもと違うし、メイクも変えたんだけど、かわいいでしょ⁉」と明るく伝えることで、場がなごむし、私自身の心も健やかでいられます。「察してくれるよね?」をやめて、きちんと言葉にすることで、ネガティブな部分をだいぶ克服できましたね。

 

PROFILE 福田典子さん

ふくだ・のりこ。1991年、福岡県生まれ。立教大学経営学部卒業後、2013年にRKB毎日放送に入社。16年6月に退社し、同年8月テレビ東京に入社。24年3月末に退社し、同年4月、歯科医療系のメディカルテック企業SCOグループに転職。広報ブランディング部COC(Chief Oral health Communicator)に就任。フリーアナウンサーとしても活動中。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/福田典子