生まれつき髪が少なく薄い症状に悩まされていたmemeさん。中学3年時に「びまん性脱毛症」と診断され、高校3年間はクリニック通いを続けたものの、保険が適用されない治療費はあまりに膨大で── 。(全3回中の2回)

プリクラは必死にスタンプで隠して

ターバンを綺麗に巻いて

── memeさんの髪の毛は、子どもの頃から薄くて地肌が見える。縮毛で髪質が柔らかく、少ない毛量がフワッと広がり、髪の毛に対して人の視線を感じることもあると伺いました。中学3年生の終わりにクリニックを受診すると「びまん性脱毛症」と診断されましたが、その後、遺伝子疾患である「先天性乏毛症」(せんてんせいぼうもうしょう)の可能性もあると考え始めたそうですね。まず、中学3年生のときに「びまん性脱毛症」の治療をはじめましたが、どんな治療をしていましたか?

 

memeさん:いろいろありますが、食事療法では朝、昼、晩と食べたものの写真を撮ってクリニックに送るんです。酸性とアルカリ性のバランスが大事だと言われ、野菜やビタミン、タンパク質をもっと摂りましょうとか、炭水化物が多いですよ、などのアドバイスを受けます。お風呂は半身浴で入り、できるだけ腹式呼吸をするように言われました。専用のシャワーキャップを被って発汗させて汚れを出し、同じく専用のシャンプーで洗った後にトニックを塗ります。お風呂から出たら電気みたいなものを頭にあてて、トニックの浸透をよくして。夜だけではなく朝もやったほうがいいと言われ、とにかくやることがたくさんありましたね。あと、出されたサプリもめちゃくちゃ飲んだし、髪の毛を生やすための生活習慣を全部やらないといけなかった。いつも髪の毛のことを考えていてしんどかったですね。

 

── 毎日となると、なかなかハードそうです。

 

memeさん:お菓子もあんまり食べない方がいいとは言われていましたが、「もう無理…!」となったときは食べちゃって。いちおう、それも写真を送って。

 

── クリニックにはどれくらい通われましたか?

 

memeさん:片道1時間の移動で週に1、2回。2年通いましたが結局、生えなかったですね。3年目は通うのも大変だから家でやりましょうと。クリニックにはシャンプーやトニックなど買いに行って、全部で3年くらいクリニックに費やして。多少増えたような気もしましたが、全く満足するような結果ではなかったです。それどころかさらに薄くなってしまったような…。当時、プリクラが流行っていて、友達に誘われたらノリで撮りましたが、自分の姿を見て「めっちゃ薄いわ!」って実感するんです。スタンプで髪の毛をどうにか隠してました。

 

── 高校を卒業するころにはクリニックも辞めることに。

 

memeさん:これ以上、親にお金を出してもらえない。申し訳なさすぎる。保険適用ではなかったので金額があまりに莫大で、1年通うにも何百万円とかかるんですよ。それを何年も続けさせてもらって、シャンプーやサプリとか全部合わせると、トータルで大学4年間通うくらいのお金は出してもらったと思います。親は「お金はこういうときこそ出さなきゃね」と言ってくれましたが、さすがにもう…。

 

クリニックではスタッフさんともよく話をしました。「毎回、親に負担を掛けるのがつらい」「これだけ頑張っても生えない」と言ったら、一緒に泣いてくれたこともありました。ただ、クリニックを辞めてピタッと治療をしなくなったわけではなくて、大学生のころは自宅から通いやすい別のクリニックを紹介してもらうことに。よく効く成分が入った治療薬があると聞いて新たなクリニックにも通ったし、飲み薬や注射もやってみました。

 

でも、結局、少しは増えたりするんですけど、憧れていた髪の量というか、生えそろうというという状態にはほど届く、治療をすることでより髪の毛を気にしてしまって精神的にもつらくなってきたんです。

 

大学生のころはいちばん薄かったし、大学構内を歩くのも本当に嫌でした。鏡に映る自分の姿を見るのもしんどかったですね。