遺品整理からペットの火葬、ペットタクシーなど、ユニークな事業を展開する株式会社プログレス。代表取締役の森山友祐子さんは、プロのヘアメイクとして自身のキャリアをスタートさせた、異色の経歴の持ち主です。ヘアメイクからまったくの他業種に飛び込んだ経緯とは?(全2回中の1回)

ヘアメイクから遺品整理の会社へ…バイトから気づけば取締役に

株式会社プログレスの森山友祐子さん
テレビ局のヘアメイク時代の森山さん

── 前職は、テレビ局でヘアメイクを担当していたそうですね。

 

森山さん:子どものころから「メイクさん」になるのが夢だったんです。美容系の専門学校を卒業後、下積みを経て、26歳のときに念願だったテレビ業界のヘアメイクになりました。目の前の相手がメイクの力でどんどん輝きを増していく瞬間が大好きでしたね。

 

ただ、上下関係がとても厳しく体育会系の職場だったので、何時間も待機してテカリを抑えるだけだったり、荷物持ちで1日が終わってしまうことも。もちろんそれらも大事な仕事ですが、「こうしてみたい」という思いが叶わないもどかしさでモチベーションが保てなくなってしまって。「指示されたことをやるより、自分で考えて動くほうが私には向いているんだな」と実感し、1年半で転職を決意しました。

 

── そこから、どんないきさつで今のお仕事に?

 

森山さん:それまでメイク一筋だったので、違う世界も見てみたいとアルバイトで入社したのが、遺品整理を行う今の会社でした。現在はグループ総数で約350名の従業員がいますが、当時は社員数名の小さなベンチャー企業。フランチャイズ形式で全国展開をしていました。社長との距離感が近く、起業を視野に入れていた私にとって、経営を学ぶのにピッタリの環境。社長もどんどん質問してくる私を「やる気があっておもしろいヤツだ」と買ってくれ、ビジネスの場に同行させてくれました。その後、「会社を大きくしたいから手伝ってほしい。自分の会社だと思って自由にやってみて」と言われ、事業の拡大に尽力。入社3年で取締役に就任しました。

 

── アルバイトからの大抜擢だったのですね。社歴も浅く年齢も若い森山さんが取締役になることに周囲の反発はなかったですか?

 

森山さん:やはりおもしろく思わない人も多かったようで、支店の人たちから「なんで森山が?」とか「あいつに任せて大丈夫?とみんな心配しているよ」と言われ、落ち込んだこともありました。でも、へこんでいても何も解決しないので、「教えていただいてありがとうございます!」と感謝を伝えて聞く姿勢を徹底し、信頼関係の構築に努めました。一方で、真正面から受け止めすぎず、まあ、そういう意見もあるよね。でも、私を評価するのは社長であって、不満を言ってくる人たちではないからと受け流し、自分の信じることをブレずにやり続ければいいと思っていましたね。

 

── 周りの意見に耳を傾けるけれど、翻弄はされない。ブレずに意思を貫くことを大切にされてきたのですね。

 

森山さん:これから会社が大きくなっていくのに、いろんな声にいちいち翻弄されていたら経営は務まらないと自分に発破をかけ、気持ちを切り替えるようにしていました。

遺品整理でペットの遺体に遭遇「ペットもていねいに送り出したい」

── 2020年にペット火葬サービスをスタートされました。この発想はどこから生まれたのでしょう?

 

森山さん:きっかけとなった出来事が2つありました。ひとつは、遺品整理の際、置き去りにされたペットの存在です。ゴミ屋敷化した現場から猫ちゃんがひょこっと出てきたり、亡くなっている姿を発見したり…そんな話を聞くたびに胸が痛み、ペットの「幸せな最期」を考えさせられました。

 

株式会社プログレスの森山友祐子さん
実家で飼っていた愛猫と

もうひとつは、私自身のペットに対する思いです。母が保護猫を預かるボランティア活動をしていたので、常に家の中に猫が何匹もいる環境で育ちました。ただ、なかには満足に見送ってあげられなかった子もいて、後悔の気持ちがずっと残っています。行政に依頼するとモノ扱いで処理されてしまうことにも違和感があって。小学生のときには飼い猫を事故で亡くし、ペットロスで何日も学校を休むほど落ち込んだこともありました。そうした経験から“家族同然に過ごしてきたペットを人間に近いような火葬をして見送ることができたら”と考え、サービスを始めたんです。

 

サービスには、3つのプランがあり、スタッフが代理で合同火葬するプラン、立ち会いができて返骨される個別火葬プラン、そしていちばん人気があるのが、個別火葬に立ち会った後に拾骨までできるプランです。最初は号泣されていたお客様も「最後まで見届けられてよかった」とスッキリとした表情で帰っていかれることが多く、飼い主さんの心の整理にもなるのかなと思っています。