夫にゴミ出しすら頼めなかった過去も

── たとえば、どんな場面でしょう?

 

長山さん:小さなことで言うと、家庭内での日常的な家事ですね。もともとうちの夫は優しくて、お願いすればなんでもやってくれる人ですが、これまでの習慣から、ゴミ出しのような日常的な家事は自分の役割だとなんとなく思い込んできたんですね。でも、病気をきっかけに全部、夫にやってもらうようにしたんです。

 

それまでも言えばやってくれるだろうけれど「なんで頼むの?」とか「自分でやればいいのに」と思われるのがイヤで、忙しくて時間がないときでも、慌ただしくすませていました。でも、「お願いね」といざ任せてみたら、相手は意外となんとも思っていないことに気づいて。そうした経験を経て、今ではいろんなことをどんどんお願いできるようになりました。

 

長山洋子さんとご家族、ご両親
ご家族3人で長山さんのご両親と会食したときの一枚

── 何ごとも考えすぎないことにしたと。

 

長山さん:とはいえ、なにもかも丸投げしてラクをするというわけではなくて、「今は手が回らないから仕方ない」と納得できる場面でお願いすることが多いですね。それだと、あとから「申し訳なかったかな」と後悔したり、罪悪感を持たずにすみますし。あくまで、自分のできることはやるけれど、抱えすぎないというバランスがとれるようになったという感じですね。

夫婦ゲンカも激変「今は『謝って!』と(笑)」

── 肩の力が抜けてラクになった感じでしょうか。

 

長山さん:もう、すっごくラクになりましたね! 自分の気持ちにフタをして我慢をすることをやめたので、夫婦ゲンカの仕方も変わりました。

 

── といいますと…?

 

長山さん:以前までは、「これって相手が間違っているのでは…」と思う場面でも「どちらかが100%悪いなんてことはないのだから、きっと私にも悪いところがあったに違いない」と思って、反省したりしていたんです。でも、それもやめました。最近は「いや、これはどう考えても私は悪くないな」と思ったら、お互いが冷静になった翌日あたりに、「昨日言ったこと、覚えてる?」と、全部説明して、「だから、謝って!」と(笑)。

 

── なるほど(笑)。ご自分を過度に責めるのをやめたんですね。

 

長山さん:そうだと思いますね。モヤモヤを放置しておくと、いろいろ考えだしてしまうので、ひとつずつきちんと解消してから、前に進みたいタイプなんです。相手と自分の感情は絶対に違うので、ちょっと気持ちが落ち着いてから、話し合いをして解決したい。モヤモヤを自分のなかに溜めこまないようになって、すごく生きやすくなりました。

 

PROFILE 長山洋子さん

ながやま・ようこ。1968年、東京都生まれ。1984年に『春はSA-RA SA-RA』でアイドル・ポップスシンガーとしてデビュー。86年にユーロビートの代表曲『ヴィーナス』をカバーし、大ヒット。88年、映画『恋子の毎日』に主演し、女優としても活躍。93年に25歳で演歌歌手に転身し、以後、演歌界で活躍。2009年にアメリカ人実業家と結婚し、翌年に長女を出産。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/長山洋子