歌手として40年のキャリアをもつ長山洋子さん。2019年に初期の乳がんが見つかり、 全摘手術を受けました。治療の日々は苦しかったものの、意外なプラスの変化もあったそう。もともと人に甘えたり頼ったりするのが苦手だったのが、病気がきっかけで「いい意味でわがままが言えるようになった」といいます。(全4回中の2回)

人に頼れなかった人生が乳がんで変わった

デビュー当時の長山洋子さん
デビューして間もないころの初々しい長山さん

── 51歳で乳がんを経験されました。病気を通じて、ご自身のなかで気づきや変化はありましたか?

 

長山さん:病気になって初めて人に頼ることを覚えて、人生が大きく変わりました。もともと私は、人に甘えたり、周りに頼ったりするのが苦手で、なんでもひとりでやってしまうところがあったんです。「これを頼んだら申し訳ないかな」とか「負担に思われないだろうか」と、相手がどう感じるかを考えてためらってしまい、それなら自分でやってしまうほうがラクだなと思っていました。つらい気持ちを打ち明けることも苦手で、いろんなことをため込んでしまっていたんですね。長年のそうした積み重ねが、ストレスの原因になっていたと気づき、「もっと自分を大切にしなければ」と、思うようになりました。

 

20代のころの長山洋子さん
20代のころの長山さん。もともと人に頼れない性格だった

── そうだったのですね。ご自分を大切にしようと思われたきっかけは、なんだったのでしょうか。

 

長山さん:病気を経験し、自分の人生や命というものと向き合ったときに、これまで無理をして頑張りすぎていたなと、すごく感じたんです。もっと肩の力を抜いてラクにやればよかったのに、それができずにもがいて苦しかった。他人からどう思われるかを気にしすぎて、いろいろと抱え込みすぎていたんですね。心と体を健やかに保つには、まずは、私自身の気持ちを優先することが大事。自分をないがしろにしてはいけないんだなと痛感しました。

 

そう思ったら、他人の視線がまったく気にならなくなったんですよね。「わがままだな、あいつはと思われたっていいや。だって私がそうしたいだもん!」と吹っきれたんです。誰かに何かをお願いするときも、「ここは甘えよう」といちいち気負わず、自然と頼めるようになりました。