夏休みシーズン「動画視聴ばかりで本を読まない」とわが子の姿に嘆く保護者も少なくないのでは。どうすれば本を読める子を作れるのか?なぜ読書が学力の底上げになるのか?『東大発!1万人の子どもが変わった ハマるおうち読書』の著者で、子どもが読書にハマるオンライン習い事「ヨンデミー」 を立ち上げた笹沼颯太さんに話を聞きました。

「子どもが自然と本を好きになる」のは昔よりも難しい

── 「子どもがYouTubeやTikTokの動画を見ることに夢中で、本をまったく読まない」と悩む保護者が増えています。

 

笹沼さん:生まれたときからタブレットが身近にある世代の子どもたちが、成長して動画に夢中になるのは自然なことでしょう。目と手が届くところに常にスマホやタブレットがあり、YouTubeなどの魅力的なコンテンツがたくさん詰まっているのですから当然です。しかし、動画しか見ない子どもの姿に保護者が不安を感じる気持ちも理解できます。僕は大学在学中に小学生の家庭教師をしていましたが、すべてのご家庭の保護者さんから「うちの子は本を読まないのですがどうすればいいですか?」と相談されていましたから。

 

── 「幼少期にたくさん読み聞かせをしたのに、成長したら動画しか見なくなった」というケースもよく聞きます。 

 

笹沼さん:子どもにとって、読み聞かせは、大人が音読するのをただ聞いていればいいのでラクなんです。ところが「自分の目で文字を追って解釈する」段階になると、本を読むことが一気に難しくなる。映像が勝手に流れてくる動画と違い、読書は主体的にページをめくって文字を追わなければならないので、慣れないうちは大変です。動画コンテンツが大量に溢れる現代は、「子どもが自然と本好きになる」ことが昔よりも難しくなっているのです。

 

── そう考えるとあらゆるメディアの中でも、文字の本を読む行為がやはり一番ハードルが高いように思えます。

 

笹沼さん:その通りです。文字だけの本はビジュアルがないから想像力を働かせないといけないし、音声メディアのように何かをしながら楽しむこともできません。けれども、裏返すとそのハードルの高さこそが本を読む価値でもあります。能動的に文字を追うからこそ物語世界に深く入り込めるし、マンガよりもしっかりとまとまった情報が得られる。

 

本を読んでいる最中に、人間はいろんなことを思考しています。そこに至るまでの考え方、付帯する状況、文脈など、さまざまなことを感じ、考えながら読んでいる。知る、感じる、考える。これらすべてを含む「読書」という選択肢を人生に持っておくことは、一生ものの武器を手に入れることと同じなのです。