「嫌だという気持ちを全力で表現することがあって」と語る元チャットモンチーの福岡晃子さん。悩んだ末、4月に出版された著書で4歳の息子が発達障害であることを公表しました。(全3回中の3回)

突然、知らない人に話しかけるも

福岡晃子
撮影/weathershop

── 4歳の息子さんは発達障害のひとつ、自閉症スペクトラムと公表されています。コミュニケーションの取り方が独特だそうですが、自分の意思を伝えることはできますか?

 

福岡さん:「ジュース飲みたい」「お菓子食べたい」など、短い要望は言えるようになってきましたが、長い文章になると難しいです。私が何か話しかけるときも「今日は保育園で何をしたの?」だと答える範囲が広くなるので、「カエル取った?」と聞くと「取った」、「今日はAちゃんと遊んだ?」「遊んだ」と返ってきて、遊んでなかったら何も返ってこない(笑)。

 

いっぽうで、たとえばショッピングモールで買い物をしていると突然、知らない人に話しかけることがあります。「これ買った」とおもちゃを唐突に見せて、延々としゃべり続けるんですが、会話が一方通行なのでキャッチボールにならないんです。話しかけられた方も「何歳?」と聞いてくれているのに全部無視。相手の方も「え…?」って思っているかもしれないですけど。

 

── ネガティブな感情がうまく伝えられないこともあるそうですね。

 

福岡さん:以前、言葉がうまく出せなかったときは、壁だろうがアスファルトだろうが5回10回と頭をぶつけて、「嫌だ」という気持ちを全力で表現をしていましたね。療育センターでは定型発達児と一緒に過ごせるよう、椅子に長く座れるようなリハビリもしていましたが、どうしても自分がうまくできないことが多くなると、何度も頭をぶつけているんです。私はその状況になったらムリに辞めさせるのではなく、頭の下に手を引くくらい。ストレスの理由が見つけ出せたら取り除くのですが、毎回わかるわけでもないし。そもそも、療育センターに通う前からときどきやっていたので、ほかの子もみんなやっているものかと思っていましたが、後から症状のひとつだと知りました。

予定外のことや変化に対しては

福岡晃子と長男
息子さんと

── コミュニケーションの取り方で工夫をしていることはありますか?

 

福岡さん:以前は絵カードを見せていて、たとえばトイレの写真を見せながら「今からトイレに行きます」「手を洗います」と誘導していましたが、最近は絵カードなしでも言葉で言えばわかるようになってきました。あと、1日の見通しが立つと安心するようなので、朝に1日の流れを説明しています。「今日は1.保育園にいく。2.お昼ご飯を食べる。3.お昼寝する。4.とうちゃんが迎えにくる。5.カエルを取りに行く」とか(笑)。何度か暗唱しながら順番を覚えていくみたいです。以前は短い時間しか把握できなかったのですが、今は1日単位でも覚えられるようになりました。

 

玄関で靴を履くときも「靴を履いて」と「だから早く靴を履いて」では、息子にとっては言葉が変わってきてしまうので、一貫して「靴履きます」と息子の主語で言います。「靴履いて」はこちらの主語ですが、「靴履きます」は息子の主観の言葉になるのでわかりやすいんです。ほかにも「今からご飯食べます」「お風呂入ります」といった感じですね。

 

──「お風呂に入って」ではないんですね。

 

福岡さん:息子の症状に気づいてなかったときは、私が「お風呂入って」と言うと、息子も「お風呂入って」と言ってました。最近は減りましたが、言葉がで始めたときは基本おうむ返しだったので。

 

── 予定外のことや変化を受け入れにくいことはありますか?

 

福岡さん:保育園で進級して担任の先生や教室が変わったりすると、少しストレスがかかってくるのかなと思うことはあります。また、私が仕事で数日、家を空けるときは前もって話はしますが、急な予定変更があった場合はちゃんと話をしないと興奮して泣き叫ぶんです。こっそり出ていくのも違うなと思って、きちんと説明して納得いくまで話はするようにしています。