涸沢カールの動画がバズって1週間で万単位の再生が

会社員時代のかほさん
会社員時代のかほさん

── そこからすぐに登山YouTuberとして活動されたのでしょうか?

 

かほさん:テレビ制作会社に2年半勤めた後に、広告会社に転職をしました。自分の中でテレビ制作の仕事をやりきった気持ちがあったのと、周りの友人たちがキャリアアップしている時期で、私ももっといろいろなことに挑戦しなければという気持ちになったのが理由です。広告会社、その後はアプリの会社に勤めて、広告提案や営業、アプリ開発や運営など、さまざまな業務に携わりました。

 

根石岳に登ってからアプリ会社を辞めるまでには4年ほどの期間があったのですが、この間も、もちろん山には登っていました。といっても、仕事をしているので毎週登るのはなかなか難しく、趣味でたまに登山に行きますという程度です。YouTubeを始めたのはアプリの会社に勤めているとき、仕事がうまくいっていない時期で…。趣味の登山で気晴らしにYouTubeをやってみようかと思ったのがきっかけでした。

 

── かほさんがYouTubeを始めたのは2019年だと思いますが、その頃はほかにも登山YouTuberは多かったのでしょうか?

 

かほさん:いるにはいましたが、あまりたくさんはいませんでした。なので、もしかしたら成功するチャンスがあるのではと思ったんです。登山をしているときに思ったのは、すれ違う人の年齢が私より上の人が多いということ。YouTubeって当時は若い人向けのコンテンツで、とにかく展開が早くて目まぐるしい。私はいろいろな世代に見てもらうためにゆっくりしたテンポの動画を作りたいと考え、それを意識しながらチャンネル「かほの登山日記」を立ち上げました。気持ちよく見てもらうための撮影や編集技術は、AD時代の経験が生かされたと思います。

 

── 1本目の動画の反響はどうでしたか?

 

かほさん:それが全然で(笑)。高尾山を登った動画をアップしたのですが、1週間経っても再生数は50回程度でほとんど伸びませんでした。それで2本目は上高地にある涸沢カールという登山者に人気のスポットに行く様子をアップしたんです。すると、これがバズって、1週間で万単位再生されました。

 

これが続けば仕事になるのではと、専業YouTuberになることを考えるように。会社員とYouTuberの兼業は、週末は登山に行き、仕事の後で残りの5日に編集をしなければいかないのでなかなかハードで…。週に1〜2本は動画を上げたかったので、2本目の動画がバズってしばらくしてから会社を辞めることにしたんです。

 

冬の八ヶ岳(赤岳)
冬の八ヶ岳(赤岳)

── そこからは順調でしたか?

 

かほさん:実は退職して専業YouTuberになったのが2020年3月だったのですが、そこからすぐにコロナ禍に突入してしまい…。緊急事態宣言などで登山に行くことができない時期だったので、動画のネタを探すのがとても大変でした。山飯づくりや購入品レビューなどの動画を上げていましたが、どれも材料や道具を買うのにそもそもお金がかかりますからね。知恵を絞って動画を作っても登山動画のようには再生数が伸びず、大赤字でした。

 

夏、秋になり行動制限などが徐々に減ってきた頃に登山を再開すると、ちょうど世間も登山やキャンプブームで動画が見てもらえるように。企業タイアップもいただけるようになり、そこからは軌道に乗り始めました。視聴者さんからは「かほさんの動画はテンポがゆっくりだし、わかりやすい」とよく言っていただけるので、これからもそれを意識しながら動画作りに励みたいですね。

 

富士山の登山道から
富士山の登山道から

 

PROFILE かほさん

岐阜県出身。登録者数30万人を超える「かほの登山日記」を運営する登山YouTuber。国内の山はもちろん、現在は世界7大陸の最も高い山を目指す、セブンサミッツにも挑戦中。著書『山登りを趣味にする ソロ登山ステップアップ』(マイナビ出版)を発売。

取材・文/酒井明子 写真提供/かほ