不妊治療の末にわが子を授かった川村ひかるさんでしたが、妊娠後期に臍帯異常が見つかり帝王切開での出産とトラブルが続きました 。当時の状況を伺いました。(全4回中の3回)

つわりに悩まされ「体重は36キロ」まで減った

川村ひかる

── 若年性更年期、脳動脈瘤、ご主人の男性不妊などを乗り越えて、無事に妊娠されたそうですね。妊婦生活はいかがでしたか?

 

川村さん:本当に大変だった妊活を乗り越えて、ようやく妊娠したので、「絶対にお腹の子を守ろう」と、神経質になっていました。妊娠中はトラブルが多く、妊娠初期にはインフルエンザにかかってしまって。「薬を飲んでも問題ありません」と医師から言われましたが、万が一のことがあったら大変だと思い、薬をいっさい飲みませんでした。そうしたら、咳が治らず喘息になってしまい…。つわりもひどく、何も食べられなくなって体重が36キロまで減ってしまいました。

 

つわりには治療方法がありません。医師からも「スポーツドリンクやゼリーでもいいから、何か口にしてください」と言われるだけでした。なんとか身体にいいものを口にしようといろいろ調べて、タンパク質をとるといいとあったので、豆乳にきな粉をかけたりスープなど少しずつ食べるなど工夫をしていたんです。身近に相談できる人もいなくて、とても不安でした。私の母は、自分が妊娠したのは昔のことだからどのように過ごしていたかはもう忘れていたし、妊娠・出産経験のある友人も、それぞれ妊娠時の体調は異なります。私の場合は大学病院でしたので、待ち時間は長いけれど診察時間はあっという間で、細かいことをじっくりと聞けるような状況ではありませんでした。

医師が馬乗りになり2時間半かかって出産

── 大変な苦労をされた妊娠期間だったんですね。

 

川村さん:出産も大変でした。私は脳に動脈瘤があり、出産でいきむとそれが破裂するおそれがあると言われ、出産方法は最初から帝王切開と決まっていたんです。でも、妊娠後期にエコー検査で臍帯卵膜がみつかり「胎盤も通常より大きいようだから、このまま赤ちゃんが成長すると臍帯を圧迫し、酸素が行き届かなくて大変なことになる」と言われて。赤ちゃんの身体の機能が十分成熟する妊娠37週になったらすぐに帝王切開を行うことになりました。

 

── 出産時はいかがでしたか?

 

川村さん:帝王切開の手術前に、看護師さんに「手術、怖いな…」と話したら、「大丈夫よ。麻酔しているから手術中は痛くないし、1時間もすれば全部終わって、赤ちゃんに会えるわよ」と、励ましてくれました。ところが、実際は2時間半もかかることに。というのも通常、お腹の赤ちゃんは出産に向けて子宮の出口のほうに下がってきます。ところが、私の赤ちゃんは週数が早かったこともあり、まだ下がっていなかったんです。

 

川村ひかる
小学2年生で英検3級に挑戦する川村ひかるさんのお子さん

いざお腹を切ってみたら、先生が「赤ちゃんが見つからない」と焦っていて。上のほうにいる赤ちゃんを下におろすため、私の上に馬乗りになり、お腹を力いっぱい押してきました。局部麻酔だったから、押された圧迫感などが全部伝わってくるんです。手術前は食事をせず、体力も消耗するので、すごく大変でした。無事に男の子を出産し元気な産声を聞いたときは、ホッとし、「やっと会えた」と感動で涙がとまらなかったです。私が出産した病院は大きな大学病院だったので母子同室ではなく、新生児室は母親が入院している部屋とは別のフロアにあったんです。麻酔がきれてからは帝王切開の傷がすごく痛くて。でも、息子の顔を少しでも見たくて、よろよろになりながら、はうようにして新生児室に通っていました。