小学5年から高校1年まで、親からの虐待で何度もつらい経験を強いられた阿部紫桜さん(仮名)。メディアで当時の状況や感じたことを積極的に発信しています。その理由を「母親への復讐」と語ったことも。その真意を話してくれました。(全3回中の3回)

「母親への復讐」とSNSに投稿した理由

阿部紫桜さん
メディアに積極的に出演している阿部紫桜さん

── 親からの虐待が原因で小5から度重なる一時保護を経験し、中学時代は児童心理治療施設、高校生時代は自立援助ホームと里親のもとで過ごしています。そんな阿部さんは以前、SNSで「自分がメディアに出演することは母親への復讐」だと投稿されていました。当時はどんな気持ちだったのでしょうか。

 

阿部さん:私が母や義父からされた虐待の話を発信することで、親にも自分と同じように苦しんでほしいと思ったんです。母は虐待のことを否定しますが、自分のやってきたことを現実としてわかってほしいとずっと願ってきました。ただ、距離を少し置いている今は、以前よりも気持ちがやわらいでいるのを感じています。母も少しは悲しんでいるだろうから…と思うようにもなりました。荷物を取りに行く用事もあるので、ときどき連絡をして、実家に帰っています。

 

── お母さんとは連絡を取っているのですね。

 

阿部さん:はい。とはいっても、関係が修復したというわけではなくて。この前も、私が顔を出して活動することに対して、母から「あんたが悪い」と言われたんです。それに対しても、「そもそも母や義父から虐待されていなかったら、やる必要はなかったんだけどね」と言い返したいですし。それに、私が人前に出ることには大きな意味があると思っています。私のように活動をしたくても、親のことを気にして活動ができない子はたくさんいるから。彼らのためにも、私は顔出しができる当事者のひとりとして活動していきたいです。

大人への不信感が子どもたちの行き場をなくす

── 社会問題となっているトー横キッズについても、「あそこに行く事情がある」とSNSで投稿されていました。

 

阿部さん:トー横キッズと呼ばれる子たちには、警察や児童相談所、行政には頼ることができないと、あきらめている子が多いと思うんです。家庭環境が複雑で、私のように虐待されて育った子が大半じゃないかと思っていて。警察や児童相談所に頼ったとしても、最終的に家庭に戻されたりして、行き場をなくした子たちなのではないか、という気がしています。

 

根本には、「自分をわかってくれない。どうせ助けてくれない」という、大人への不信感があると思っています。昔の私と同じなんです。だから少しでも、そういう子たちの手助けがしたいという思いでいます。それで、今は社会福祉士の資格取得を目指して大学で勉強をしています。

 

映画の完成披露試写会で挨拶する阿部紫桜さん、山本昌子さん、加藤登紀子さん
阿部紫桜さん(右端)。昨年、虐待に遭った子どもたちのドキュメンタリー映画にメインキャストとして出演した