家事分担が「100:0」
── 子どもに季節の移り変わりを伝えるには、普段から自分自身もそれに気づく心を持っていないといけないですよね。
高橋さん:それに気づく彼の人間性を素敵だなと思いました。ただ、私には冷たいですけどね(笑)。もうひとつ驚かされたのが、子どもへの「読み聞かせ」です。たとえば私の場合、「桃太郎」を読み聞かせるときは「むかし昔、あるところに~」と、そのまま本を読み進めるだけだったのですが、夫は、「ある日、おじいさんは山へ芝刈りに行きました」から、「この芝の色は何色だろうね?」と、子どもに問いかけながら、物語を進めていくんです。「犬と猿とキジがお供になりました」というところでは、「犬ってなんて鳴くんだっけ?」。子どもが「ワンワン!」と答えたら、「そうだね。じゃあサルはどうだろう?」という感じで、子どもに考えさせながら、物語の世界を膨らませていくんです。子どもも、前のめりになって夢中で聞いていて、私の読み聞かせのときとは、目の輝きが違っていました。
絵本の読み聞かせは、本をそのまま読むことだと思っていた私にとって、ちょっと衝撃でした。彼は、その場にあるもので、どんどん遊びを膨らませたり、子どもの心を育てるような関わり方ができるんです。そういう意味では、子育てを通じて、夫から得る気づきがすごくたくさんあって、有難いことだなと思いますね。一方で、教育のプロとして携わってきたから、私の子育てに対して、手厳しい面もあります。
── そうなんですね。たとえばどういったことでしょう?
高橋さん:夫は食事を残さず食べることが大事だという考え。だから、私が子どもの食事をちょっと多めに出したりすると、「残さずに済むような量を出せばいいのに」と言われて、「あぁ、なるほどな」と。だいたい納得するのですが、子育てに関しては割と細かいチェックが入るので、“小姑みたいだな”と思うときもあります(笑)。
── 家事は分担されているのですか?
高橋さん:育児はすごくよくやってくれますが、家事は、100:0で私ですね。ゴミ出しと、冬場の加湿器の水入れをたまにやってくれるぐらい。
── それは、ケンカの原因にならないのですか?
高橋さん:ならないですね。私は、ちょっと今の時代に逆行していると自分でも分かっているのですが、昭和の古い価値観で、“家事は奥さんがするもの”という感覚があって。だから、料理も家事も苦ではないし、むしろ自分のペースでやりたいので、下手に手を出されるほうがストレスになりそうで…。自分の家事のルーティンを崩されたくないんですよね。
── それは、ご両親の影響だったりするのでしょうか?
高橋さん:いやいや、むしろ逆です。うちの父親は、家事をすごくよくやる人で、お皿洗いなんかも「一緒にやった方が早く終わって、そのぶん、夫婦の時間が過ごせるね」という考え方。だから率先して手伝いますね。なのに、なぜ私は昭和の価値観が刷り込まれているんだろう…と不思議です。今の時代、女だから家事をやるなんて、ナンセンスでまったく時代錯誤だとわかっているんですけれど、なかなかそこから抜け出せなくて…。もう少しアップデートが必要ですね。
PROFILE 高橋真麻さん
1981年、東京都出身。2004年、フジテレビにアナウンサーとして入社。13年、フジテレビを退社し、フリーアナウンサーに転身。以降、バラエティ番組や報道番組などで活躍中。18年に結婚し、20年に、第1子女児を出産。22年に、第2子男児を出産。
取材・文/西尾英子 写真提供/高橋真麻