4歳と1歳のお子さんをもつ高橋真麻さん。子育ては「義務と作業」だと思っていた感覚が、夫の行動を通して一変していったそうで ── 。(全5回中の1回)

送り迎えは親の義務、作業だと思っていたが

高橋真麻

── 2019年に長女、2022年に息子を出産されました。2人のお子さんに恵まれましたが、夫婦で決めている“子育てのルール”はありますか?

 

高橋さん:子どもが生まれたときに、夫婦で決めた約束が2つあります。1つ目は「子どもに赤ちゃん言葉を使わない」ということ。子どもは舌足らずだから「~でしゅ」と言ってしまうだけで、きちんとした言語を習得させる為には本来、親が正しい日本語をしゃべっていないとダメなので、赤ちゃん言葉は使わないようにしていますね。

 

2つ目は、子どもの前でお互いの悪口を言わないこと。子どもにとって、どちらも大事な親なので、混乱させたり、心を痛めるようなことは絶対にやめようね、と。この2つを夫婦の子育てルールにしています。

夫はもともと幼児教育に携わっていたので知識が豊富で、子育てにもとても協力的で助かります。ただ、夫に言わせれば、この「協力的」という言葉が納得いかないらしく、「協力してるんじゃなくて、一緒にやっている」と言います。

 

── パートナーが子育てに対して、そうした意識を持っていてくれると助かりますね。

 

高橋さん:そうなんですよ。実をいうと、夫のことはものすごく好きですが、自分が母になるまでそこまで尊敬の感情はもっていなかったんです(笑)。でも、子どもが生まれてから、彼をものすごくリスペクトするようになったんです。

 

── それはなぜでしょう?

 

高橋さん:彼は、子育てにおいて、私にはない視点をたくさん持っているんです。まず驚いたのが、保育園への送り迎えでした。私としては、仕事も家事もあるので、いかに最短ルートで効率的に送り届けるかで頭がいっぱい。送り迎えは親の義務という感覚で、「作業」のひとつにすぎなかったんです。でも、夫は違いました。

 

子どもを保育園に送る道中で、「見てごらん、あそこにあんなお花が咲いているね」とか「今日は野良猫ちゃんがいるよ」とか「昨日までつぼみだったお花が咲いたね」などと、子どもとのコミュニケーションをとりながら、心を育てる時間にしていたんです。

 

それを知ったとき「この人ってすごい!」と感激しました。そこから私も彼を見習って、送り迎えのときには、子どもと一緒に歌を歌ったり、季節感を感じながらおしゃべりを楽しんだりと、コミュニケーションを大事にするようになったら、毎日の送り迎えの時間が楽しくなって、心が軽くなったんです。

 

── お子さんだけでなく、真麻さん自身の心を癒す時間にもなったのですね。

 

高橋さん:“義務”と“作業”の感覚を手放したら、私自身、心にゆとりが持てるようになり、子どももこれまで以上に情緒が豊かになりました。それ以来、育児に対する取り組み方が変わりました。それまで、ご飯を食べさせたり、お風呂に入れたり、寝かしつけたりするのは、自分の中で“義務と作業”の感覚があったのです。そうではなくて、子どもにとって、母親とのコミュニケーションだったり、新しい何を知る時間だと考えるようになったら、子育てがもっと楽しくなりましたし、子どもの吸収力も伸びた気がしますね。