「ホストとテレビショッピングは似ている」と、元カリスマホストの城咲仁さん(46)は言います。いくら魅力を伝えても、軽妙なトークをしても、それだけでは売れません。説得力をもつ仕事の伝え方、あり方とは何か。城咲さんの声に耳を傾けます。(全4回中の3回)

テレビショッピングで最高売上が1日2億円!

城咲仁

── テレビショッピングのバイヤーという仕事に取り組むようになったのはどんなきっかけからだったのでしょうか?

 

城咲さん:タレント業を始めた頃に、バイヤーの仕事を依頼されたのがきっかけです。当時から現在にいたるまで『QVC』という通販専門チャンネルに出演しています。最初は徹底的に台本を読み込んで、商品を紹介していました。でも、だんだんそれだけでは売れないと気づいたんです。

 

── それはなぜでしょうか?

 

城咲さん:テレビショッピングで扱われる商品は、「どんな魅力があるのか」「どれだけ開発者が努力したのか」など、背景やこだわりが視聴者の方に伝わってこそ売れるんです。

 

たとえば、通常より高価なフライパンをテレビショッピングで販売するとします。その際、「このフライパンはすごくいい素材を使っているんですよ」と、台本通りに伝えても商品のよさが伝わりません。

 

でも、バイヤーの自分が現地まで行って直接開発者の方のお話を聞き、製造現場を見学し、実際に使用したうえで「このフライパンの素材は、技術者が何年もかけて開発したものです。長持ちするからコストパフォーマンスもいいし、食材のおいしさを引き出すこともできます」など、自分の言葉で伝えると、反応がガラリと変わります。

 

「たしかに高いけど、それだけの価値がある商品だ。買ってみよう」と、視聴者の方の心が動くんです。

 

城咲仁
商品について学ぶため、実際に製造現場まで見学に行く

── 説得力がまったく違いますね。製造現場まで取材に行くのは大変ではないですか?

 

城咲さん:むしろ自分から積極的に伺っています。製造現場にバイヤーが行くと、現場の方たちはすごく喜んでくださるんです。メールや電話だけでは聞けない裏話や、なぜその商品がいいのかというエビデンスを教えてくれます。

 

こうして、商品ができ上がるまでの臨場感を目の当たりにすることで、バイヤーの言葉に説得力が生まれます。1日に2億円売り上げたのがこれまでの最高売上額です。

 

── 2憶円!すごい売り上げですね。

 

城咲さん:ある意味、ホストとテレビショッピングのバイヤーは似ています。ホストは、お客様に心地よく楽しんでいただく気配りやサービスを提供します。「これだけ丁寧な接客をしてもらえるのなら、高額な料金を払ってもいい」と思っていただく仕事なんです。

 

テレビショッピングでも「他のものより高いけれど、こんなにこだわっている商品だったらほしい」と思ってもらえるからこそ、多くの方に購入していただけます。

 

サービスやこだわりという「付加価値」をつけることで、お客様に満足してもらうのは、ホストもバイヤーも変わりません。だからホスト時代から現在まで、僕はずっと同じことに取り組んでいるんです。