認知症の義父を見て子どもたちが「かわいい」って

── 高橋さんの動画では、旦那さんやお子さんたちと、義理のお父さんのやりとりも印象的です。旅立ちが近づく場面で、ご家族みなさんが義理のお父さんに声をかけている様子に、思わず涙があふれました。

 

高橋さん:わが家では介護と育児を同時にしていたので、義父が認知症になってからも子どもたちと遊ぶ様子やピアノを弾いて義父に聴かせる様子も、そのまま発信していました。

 

私自身、義父と子どもたちの微笑ましい様子を見るたびに、どれだけつらくても「この生活を頑張って続けよう」と思えていたので、介護する人と介護される人のやりとりだけでなく、ほかの家族との関わりもありのまま発信しています。

 

介護の終盤、子どもたちは義父のことを「かわいい」と言っていました。子どもたちと義父の間でいい関係が築けていたことに、「介護を頑張って続けてよかったな」と思えています。

 

仲のよい孫と祖父の関係

── 発信を始めてから、観ている人の反応はいかがでしたか?

 

高橋さん:観てくれた方からは、「介護の終わりが見えず、つらいです」といった悩みや、「自分だけじゃないと思えました」といった感想をいただきます。「わかります」「つらいですよね」と、私もコメントをお返しするのですが、やりとりを通じて「ひとりじゃないんだ」と私も救われています。

 

動画での発信活動を始めた翌年には、YouTubeになじみのない人のために本を出版し、ブログも開設しました。介護について、できるだけたくさんの人に知っていただきたいし、ひとりで頑張っている人の目に留まればと思っています。現在、実家に通いながら母を介護しているのですが、「通い介護」をしている人も多いので、今後も発信を続けていきたいです。

介護は頑張りすぎないこと「する側の心のバランスも大切」

── 今後、介護に直面する可能性のある人は多いと思います。伝えたいことはありますか?

 

高橋さん:最初に大切なのが、やっぱり介護資金の準備ですね。親の資金に余裕がない限りは、病院や施設での介護はもちろん、自宅介護でもお金の心配は出てきます。

 

今後、団塊の世代の介護が急増することが予想され、介護についてばく然と不安を感じている人も多いと思います。ただ、全員が私のようにガッツリ介護に関わらないといけないわけではなくて、介護サービスをうまく活用することもとても大事だと考えています。

 

介護って毎日続いていくので、介護する人や家族の心のバランスを取ることが大切なんです。「わたしばっかり頑張っているのに」と自分の気持ちを押し出すと、どうしても家族間がギスギスしてしまう。かといって、「自分がやらなきゃ」と、ひとりでムリしすぎるのもよくありません。ためらわずに任せられる部分は介護サービスを活用して、自分と家族の心を大切にしてほしいです。

 

PROFILE 高橋里華さん

たかはし・りか。1972年、埼玉県生まれ。15歳で国民的美少女コンテストに出場し、入賞。芸能界デビューを果たす。1992年度フジテレビビジュアルクイーン。2006年に結婚すると同時に祖父母の介護を開始、その後義父母との同居、介護を続ける。2020年にYouTubeチャンネルを開設し、2021年には『じいじ、最期まで看るからね』(CCCメディアハウス)を出版。二児の母。

 

取材・文/笠井ゆかり 画像提供/高橋里華