乃木坂46の1期生メンバーとして8年活躍し、2019年惜しまれながら卒業した衛藤美彩さん。選抜メンバーに選ばれなかったメンバーである「アンダー」時代、握手会での「神対応」でコツコツと人気を獲得し選抜入り。卒業時には人気フロントメンバーとしてグループをけん引してきました。今だから明かせる当時のお話を伺いました。(全5回中の3回)

「策士だったと思います」選抜メンバー入りへ

── 衛藤さんといえば乃木坂46時代はファンの方との交流イベントである握手会の振る舞いが、ファンの間では「神対応」と言われてたそうですね。

 

衛藤さん:そうですね、握手会での私は今思えば「策士」だったと思います(笑)。当時、私はアンダー(シングル曲を歌う選抜メンバーに選ばれなかったメンバー)だったので、なかなかメディアなどに露出する機会がなくて。「どうしたらもっとファンの方に応援していただけるだろう?」って考えていたんです。

 

握手会には2種類あって、購入したCDの応募券を使いお目当てのメンバーを指定して抽選に申し込める「個別握手会」と、購入したCDについている握手券があれば現場で好きなメンバーのレーンを選んで並べる「全国握手会」がありました。個別握手会では「誰々は一次受付で完売してるから二次受付はもうない」というような情報が事前にネットでわかってしまうものだったので、そこで人気の差が歴然でした。もちろんアンダーの子の抽選に参加してきてくださるファンもいらっしゃいますが、同じ会場で少ないファンの方と握手した後はずっと立っているだけという場面もありました。

 

握手会は本気で取り組んだ

私はアンダーの中で年長だったので「なんとかせねば」と思いまして。選抜メンバーの子たちはもちろん忙しくて寝る間もない状況。そのぶん、アンダーの私のほうが体力も気力も残ってるから、握手会でもっと本気を出せるはずと思ったんです。

 

そこで私は全国握手会に目をつけました。抽選ではないので、握手券を持って並べば握手できますし、手ぶらで来て当日現場でCDを買って並ぶこともできます。人気メンバーの列は何時間も並ぶことになるので、1回または2回並ぶのが限界。でも、私のレーンだと待機列も待ち時間も短いので6回も10回も話せるわけです。選抜メンバー目当てに来たファンの方が私の短いレーンに目を向けてくださったときに、握手の回数が多いことで「ほんとは他の子を目当てで来たけど、今日は美彩ちゃんとたくさんしゃべったな」と、帰るときに私を思い浮かべてくれてたらいいなと。

 

ファンの方に直接会える機会ですからこんなチャンスを活かさないわけにはいきません。「美彩ちゃんを応援したいな」と思ってもらえるよう、いろんな作戦を実行しました。テーブルの端から端まで最大限、手を放さずに握手したり。握手会ノートをつくってファンの方の特徴を記録していきました。この人は友達っぽくとか、この人は恋人っぽく話すことを求めているんだとか、来てくださる方のニーズに合わせて対応もしましたね。

 

ファンの方には「ガムテープに名前を書いて名札を貼って来て」とお願いしてお顔と名前を覚えました。次に来た時に「この間も来てくれましたよね」って言えるように努力しました。そういう工夫を2度、3度と重ねるうちに、興味を持ってもらえることが増え、たくさんの方に応援していただけるようになって。私の場合は本当に最後まで握手会に助けられました。