2014年ソチ五輪日本代表の元フィギュアスケートペア選手・高橋成美さんは、2008年の全日本選手権優勝をはじめ、NHK杯や世界選手権など、さまざまな大会でメダルを獲得してきました。引退後は、解説やバラエティ番組への出演が増える一方で、2021年には日本オリンピック委員会(JOC)最年少理事にも就任。キャリアを重ねる高橋さんですが、引退後に初めてSNSを見て「何でも鵜呑みにしていたこともあった」と振り返ります。(全3回中の3回)

引退後は解説者やJOCの最年少理事に

── 引退後は、解説の機会も増えました。解説をするにあたって工夫したこと、解説時に意識していることを教えてください。

 

高橋さん:スケーターだったら知っていて当たり前のことでも触れるように工夫したり、ペアはあまり知られていない競技なので、初めて見る人が少しでもわかると楽しくなるように伝えるように意識したりしました。

 

最初は、今まで自分自身があまり親しみのなかった水泳の飛び込みなどの競技を見て、「こういうことを知れたら楽しいかも」と感じた点をノートにまとめるようにしました。

 

次に、いろいろな人にお話を聞きました。スケートを始めたばかりの大人スケーターの方に「どういうことが気になりますか?」と尋ねると、「今やっているリフトの技は何をしているのかが知りたい。あとは自分で調べられるから」と教えてくれたり、シングルだからペアのことは全然わからないという選手に「これを見て何が知りたい?」と尋ねると「どうやってバランスを取ってるのか知りたい」「とりあえず一番難しいリフトを知りたい」と答えてくれたり。「あ!そうなんだ!難しいのが知りたいんだ!」と発見して、「これが一番難しいです」と解説したこともありました。

 

ほかにも「転倒は見ればわかるから、転倒の原因のほうが知りたい」とか「スケーティングの上手・下手はどこで判断するの?」とか「ペアのふたりが違うことをしたら、どういうジャッジになるの?」とか、ルールに関して知りたいと話してくれた方もいました。ペアの場合は「ふたりが合っている・合っていないは、どの部分を見て言っているのか気になる」という声をもらったので「膝を見てください」とコメントしたこともありました。

 

現役時代、私がテレビで放送されることはそんなに多くはなかったのですが、テレビに出ると嬉しいので、録画して何回も見ていたんです(笑)。そのときに、ミスをしても次につながる希望的な解説があったりするとやる気が生まれたり、練習をさらに頑張ろうという気持ちになれたりしました。そのような経験から、NHK杯などで海外選手の解説をさせていただくときは、日本語やロシア語、英語で訳されることを想像して、選手に「こんなにほめられたんだ!」とか「こんなふうに見ていたんだ!」と思ってもらえるような解説ができればいいなと考えています。

 

フィギュアスケート解説時の高橋さん

── 2021年6月には、29歳という若さで日本オリンピック委員会(JOC)史上初の最年少理事にも選出されました。

 

高橋さん:本当に全部、運がいいだけなんですよね。ただ、その運を引き寄せているのはやはり行動しているからだと思っていて。JOCの理事になる前は、率先してアスリート委員会に入って活動をしていて、積極的に動けるところでは動くようにしていました。そんななかで、女性だったり若さだったりという要素も重なって、たまたま選んでいただいたのだと思います。

 

先輩である小塚崇彦くんが、いつも私を先導してくれています。アスリート委員会についても、彼が「選手の意見を上に伝えるパイプ役になってほしい」と言って私を推薦してくれて。いつも何かのタイミングで小塚くんが道を示してくれています。