「仕事がなくなってもなんとかなる」と決めた覚悟

── 芸能界は入れ替わりが激しい世界だと思います。少し都心から離れることに迷いはありませんでしたか?

 

小野さん:引っ越すこと自体に迷いはありませんでした。ただ、仕事の内容によっては引き受けにくくなるものはあるだろうなと、覚悟はしていました。たとえば、舞台などは毎日、稽古があります。稽古場までの移動には時間も交通費もかかりますから。でも、海外に住むわけでもないし、通おうと思えば通える距離です。負担は増えるけど、本当にやりたい仕事だったら、気合でどうにでもなると思っていました。

 

それに、「仕事がなくなるならそれまでだ」と腹をくくっていた部分もあります。動物の保護活動もしているので、動物たちはちゃんと養わないといけません。アルバイトでもなんでもすれば、なんとかなるだろうとも感じています。

 

── とても芯がしっかりしているんですね。若いころからそうした確固とした考え方をされていたのですか?

 

小野さん:基本的には変わっていないかもしれません。もちろん若いころは周囲の意見に振り回されたり、素晴らしい活動をしている人を見て「自分はこれでいいのかな」と迷ったりすることもありました。でも、誰かのアドバイスに従って、うまくいかなくても誰も責任を取ってくれないんです。結局、「自分の人生は自分で責任をとるしかない」という結論に達しました。本当にやりたいことに取り組んで、結果的に失敗しても、それはそれで意味があることだし、新しい道が拓けるきっかけになると考えています。

「小学校で話すことも」地域の活動も自然な流れで

── 木更津市の生活は、どんなところが魅力ですか?

 

小野さん:自然を身近に感じられるところです。季節の変化を肌で感じられるし、広々として気持ちがいいです。5月になると、あちこちでツバメが巣を作る様子が見られます。ヒナが成長していく姿も見られて、巣立ちのころは飛ぶ練習をするのを眺めることもできます。直売所があって新鮮な野菜が安く買えるのも嬉しいですね。あとは、人と関わることが増えました。東京でも、もちろん人との交流はありましたが、木更津では地域猫活動をしていて、その活動を自治体の下部組織にしてもらい、地域の方たちと一緒に活動しています。

 

お子さんたちと接することもあります。地域の小学校にいろんな職業に就いている人が話をする授業が1年に1回あるんです。その仕事をしていて楽しいことや大変なこと、仕事に就くためにどんなことを頑張ればいいかを伝え、小学生たちに将来どんな仕事をしたいか考えてもらう活動です。私もスケジュールが合うときは参加させてもらい、芸能界やトリマーの話をさせてもらっています。町全体で子どもを育てている空気を感じます。

 

── 人との距離が近くなったんですね。

 

小野さん:そうですね。木更津に住んで地域の人と交流することで、この土地になじめました。さみしさや将来への不安を抱くことはまったくないし、安心して暮らせています。

 

PROFILE 小野真弓さん

おの・まゆみ。1981年生まれ、千葉県出身。「アコム」のCMで人気に火がつき、グラビアアイドル、俳優として活動。2019年、東京から千葉県木更津市へ移住。 地域猫活動や預かりボランティアを行い、俳優の坂上忍氏が所有する動物保護ハウス「さかがみ家」のスタッフとしても活動中。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/小野真弓