現在3回目の結婚生活を送っている熊谷真実さん。しかし、2回目の離婚をした後も元夫と移住した浜松での生活を続けています。(全5回中の4回) 

なんで東京に帰ってこないの?

熊谷真実

── 前夫の故郷である浜松に移住されたのが2020年。その後、1年たらずで離婚された後も、浜松での生活を続けてこられました。熊谷さんのなかで、東京に戻るという選択肢もあったのでしょうか。

 

熊谷さん:いえ、まったくなかったですね。周りからは、「離婚したのにまだ浜松にいるの?」と聞かれたり、東京の友達からも「なんで帰ってこないの?嫌じゃないの?」と何度も言われました。でも、私の中では、浜松を離れるという選択肢はありませんでしたね。

 

確かに生まれ育ったのは東京ですが、もともとあまり東京という街に執着がないんです。親が亡くなり、実家がなくなった時点で、「戻る場所はもうないな」という気持ちもありました。

 

離婚はしたけれど、私にとって浜松の街は、居心地がよくて最高の場所なんです。なんといってもこの自然が気に入っているし、人もすごく温かい。離婚してからお友達もたくさんできました。

 

── 前の夫とバッタリ会って、気まずい思いをしたりすることはないのですか?

 

熊谷さん:なぜか一度も出会ったことがないんですよね。これが、ご縁というものなのかしら…。ただ、前の旦那さんには、「この街に連れてきてくれて本当にありがとう!」と思っていますし、感謝しかないです。私にとって、人生終焉の地は、浜松だったんだなという感じがするんです。「なぜ?」と聞かれても、その答えを持ち合わせていないのですが、感覚的にそんな気がしてならないんですよね。

 

── なるほど…。ただ、離婚をすると、その土地から離れて心機一転やり直したいと考える人が大半だと思うんです。かくいう私も経験者ですが、10年以上経った今でも、近くを通るのすら避けてしまいます。

 

熊谷さん:よく分かりますよ、その気持ち。実は、前の旦那さんと「京都に住もうか」という話になって、アパートを借りていた時期があるんです。でも、大きな喧嘩をしてしまい、結局、京都暮らしは断念。以来、それがトラウマになって、京都に行くたびに嫌な気持ちになってしまいます。

 

それなのに、浜松でそんなことがあっても、まったくこの場所を嫌いにならないんですよ。いったいなぜなのか。自分でも不思議でしかたないんです。

 

── 熊谷さんにとって、浜松だけは特別なのですね。

 

熊谷さん:きっとそれだけ浜松の土地が自分にしっくりと合っていたということなのでしょうね。このあたりは、“遠州のからっ風”といって、風がすごく強い地域なのですが、それが悩みを吹っ飛ばしてくれる感じがして、ただ散歩しているだけでも、気分があがります。それに、自然のなかに身を置くことで、心が開放されていく気がするんです。

 

浜松は転勤族も多いので、外から来る人にも優しいと言われていて、本当にいい人ばっかりなんですよ。いろんな人を受け入れてくれます。東京からもほどよい距離感なので、仕事も通いやすいですし、今はYouTubeなどでも活動できるから、なにも不便はありませんね。浜松に移住してから、人生がいい方向に向かっているなと実感しています。一生住み続けたいと思うくらい、今の暮らしが気に入っていますね。