夫の杉良太郎さんと結婚して福祉活動をするようになった伍代夏子さん。被災地から帰るたびに抱くという葛藤について明かしてくれました。(全5回中の3回)
役に立たないねって、言いながら帰ってくる
── 伍代さんは夫の杉良太郎さんと結婚されてから、積極的に福祉活動をするようになったそうですね。
伍代さん:福祉やチャリティ、宗教、どこかの政党支持、応援演説はやっちゃいけないゾーンで、見ざる聞かざるとしていたし、事務所からもそう言われていました。
「演歌歌手の皆さんで寄付をしましょう。ひとり10万円で寄付しませんか?」って回ってきたらいいですよ。でも、自分が率先して炊き出しに行くとか、何か目立つことをするのはよくない雰囲気もありましたし。
── 伍代さんが日本で初めて福祉活動をしたのが2004年の中越地震からだったとのこと。なかには福祉活動について売名と言う人もいますが、どう思いますか?
伍代さん:別に何言われたっていいです。そうだよ、売名だよって流しておけばいいかなと思っています。いちいち気にしていたら何もできないですし。なかにはマスコミ対応を気にして被災地に足を運べない人もいますし、福祉活動についてインタビューされたらどこまで話せばいいのか迷うという人もいます。その場合は、芸能人ではなくてひとりの人間として来ましたって言えばいいのかなと思いますね。
── 2004年の中越地震から約20年福祉活動をされて、今、どんなことを思いますか?
伍代さん:やっぱり、喜んでもらおうと思って行っているわけじゃないんですよ。必要とされているところに必要だと思う物資が届いていない怒りです。オムツやブルーシートが届けられずに余っちゃっているとか、ガソリンは自分でたどり着いた人しか給油できないとか。道が分断されて山に孤立した人たちがドラム缶で火を焚き「寒い寒い」って言っている姿が報道されたりするけど、だったらそこまで行けた人がいるってことだから。自分達で調べて、自分達が本当に困っている人たちのところに行こうっていうところから始めて今に至ります。
だから被災地で「ありがとう」って言われたかとか、そんなことどうでもいいんですよ。お礼を求めないほうがいいですね。「何しに来たの?」って言われることもあるから。
そもそも行くときはいつも不安で帰る時は虚しい。力不足だね。役に立たないねって言いながら帰ってきて、もう辞めようね。それにここだけってわけにもいかないでしょ。あっちも困ってる人もいるよ。いくら必要なものがあってもたりないし、もう辞めようって話してます。
それでも何か起こると、いやいや、やっぱり行こうかって。何かしなきゃ、可哀想だし。寒いって言ってるよ。カイロ、カイロ、カイロ持ってこう…!ってその繰り返し。