『亜麻色の髪の乙女』のヒットから20年経った島谷ひとみさん。年齢を重ねるにつれて新たな人間関係を構築する難しさに直面することがあったそうです(全4回中の4回)。

30代でプレッシャーに直面

島谷ひとみ

── 21歳でデビューして20年以上活動が続く中で、どんなことを思いますか?

 

島谷さん:デビュー当時からまわりのスタッフや大人たちがとても丁寧に接してくれました。『亜麻色の髪の乙女』がヒットしましたが、私の経験が浅かったこともあり、技術的なことよりもまずは歌に込める自分の気持ちを大切にしなさいと。事務所の方から「ピュアな気持ちで、自由に歌を歌ってくれたらいいから」と言葉をかけてもらったこともあります。

 

── これまでの長年芸能活動の中で、印象に残っている出来事はどんなことですか?

 

島谷さん:ある方からかけられた言葉がずっと心に残っています。私がまだ20代前半の頃、『第1回ザ・ジャパン・オーディション』歌手部門賞(事務所ご確認)をいただきました。その時、レコード会社の重要な方から「君はこの先どんなに売れたとしても、変わったらいけないよ。自分らしくいてね」と言われ、その言葉がすごく心に残りました。

 

── 20代と比べて30代はいかがでしたか?

 

島谷さん:さまざまなプレッシャーや変化に直面しました。たとえば、楽曲を選ぶ際に、これまでだったら事務所の方に決めていただいたものを歌えばよかったのですが、30代では「今、あなたはどうしたいの?」と意見を求められたり、選択権を与えてもらえるようになりました。反面、自分がどうしたいのかわからず、急に突き放されたような気持ちになってしまったんです。

 

また、年下で自分より経験が浅いスタッフが増えたこともあり、私自身が指導する機会も出てきました。そんなとき普段の自分とは違い口調が厳しくなることがあり、気づくと、まわりの人が私に遠慮していると感じることも。改めて指導の難しさを感じることがありました。自分さえわかっていればいい、我慢すればいいといった考え方で、自分を閉ざしていた時期もありました。 

 

── 体調面での変化はありましたか?

 

島谷さん:30代の頃はまだそれほど変化は感じていなかったものの、40代になってからは疲れていても寝れば治るというわけにはいかなくなりました。以前と比べて眠れなくなってきて、傷の治りも遅い。それまでお酒を飲んでもまったく変化はなかったのに、初めて記憶をなくした日があったんです。涙もろくなることが増え「私、歳を取ってるかもしれない」と思うようになりました。

 

去年は風邪を引かず元気に過ごしましたが、今年はお正月早々に風邪を引き、実家の階段で転倒して尾てい骨を打つというアクシデントも。骨折はなかったものの、私、こんなにどんくさかったかなということが増えてきたんです。

 

夜型だったのに夜遅くまで起きていられなくなり、コロナの影響で外出や外食がしんどくなり、寝るのも早くなりました。外に出ることも減り、体調や生活が変わってきたなと感じます。でも、考えようによってはこれを笑いのネタにして、人に話すとなると、けっこうおもしろいネタになるんですよ。たとえば棚からグラスを取り出し、冷蔵庫から牛乳を出してグラスに注ごうとしたのに、なぜかグラスを閉まってしまったりとか。普通だったら、シーンとした家の中で一人でそんな間違いをしたらすごく落ち込みます。でもライブでファンの方たちに話したら結構笑いのネタになるんですよ。そんなことの連続です。

 

── 失敗を笑いに変えるのはいいですね。

 

島谷さん:最近は、ライブでそんなことばかりぼやいています(笑)。ファンの方も同じように年を重ねている方が多いので、共感してもらえることが増えました。最近出会ったファンの方とも仲良くなって、「聞いてくれる?」みたいな感じで、まるで友達同士のようにおしゃべりしています。