小さい時から憧れの人はいない理由

アンミカ

── それでも、なかにはアン ミカさんのように自分を前向きに捉えたくても、捉えられない人や、つい人と比べてしまう人もいるかと思います。アン ミカさんはどのように自分に自信をつけていますか?

 

アン ミカさん:今はSNSで人と比べることも増えて、隣の芝生が青く見えるとか、人に対して憧れやすくなりました。キラキラしている人を見ると自分は何かたりない気がして満足できない。人との比較は何か原動力にもなるけれど、自己肯定感を薄めてしまう部分もあって、表裏一体だと思います。

 

私は、素敵な人を見たら自分と比べるよりも「わぁ、素敵!」と声に出して、SNSなら「いいね」を押してコメントもするんです。素敵な人だなって相手を認めると、相手も「こちらこそありがとうございます。アンミカさんも素敵です」って言ってくれる。自分が素敵だと思う人に褒めてもらえる。人を羨ましがってもキリがないけれど、私って素敵な人に素敵って思われてるんやって、新たに自分の魅力を再発見することを素直にする。「そんなんじゃないです」じゃなくて、「ありがとう!嬉しいわ」と言って受け取るようにして、常に自分の素敵をアップデートしながら、自分の素敵を再確認する作業が大事だなと思っています。ないものねだりより、あるもの磨きをしたいですね。

 

コンプレックスと魅力も紙一重です。私は講演会で、初対面の人同士で5分間話をして、いいところを3つ褒め合ってくださいって言うんですよ。100%自分のコンプレックスを褒められます。私は口が大きいことを絶対に言われますよ。「ビックスマイルでいいね」とか。でもこれは、私の中では幼少期から最大のコンプレックスです。当時のアイドルはみんな口が小さかったので、口お化けとあだ名をつけられたこともありました。でもそれが親からもらった遺伝であり、魅力なんだって愛するようになってからは堂々と笑って。「アンさんの顔を見てると笑顔が移るわ」「顔半分口やけど」って言いながらゲラゲラ笑うとか。自分で自分の素敵なところを見つける努力はずっとしていいと思います。

 

── 常に自分と向き合って。

 

アン ミカさん:そうですね。あと、必要以上に謙遜して「私なんて」と言うのは文化の側面もあると思うのですが、自己肯定感が低く見えるのであんまり使わない方がよいと思います。だから、誰かに褒められたことを長く覚えていられるようにメモをとって毎日見るとか。肌が綺麗と言って頂けたら、より肌の手入れを楽しむとか、憧れてる人のメイクを少し真似するとか。前向きに努力して、自分をアップデートし、自信をつけていきたいですね。私は小さいときから憧れの人がいないんです。いいなと思ったらすぐ吸収しちゃうから。常に憧れるのは、めちゃくちゃカッコよくなってる未来の自分です。

 

PROFILE  アン ミカさん

1972年韓国出身、大阪育ち。1993年パリコレ初参加後、モデル業以外でも、テレビ・ドラマ・TVCM出演など幅広く活躍。「漢方養生指導士」「日本化粧品検定1級」などの多数の資格を活かし、化粧品、洋服、ジュエリーなどをプロデュース。自身初、絵本の翻訳を担当した『スパゲッティになりたいラーメン じぶんをすきになるえほん』(KADOKAWA)が好評発売中。

 

取材・文/松永怜 写真提供/アン ミカ