ダウン症のある子に「かわいいね」って言っていいのか
── ダウン症のあるお子さんに対して、どう接していいか迷う方も多いようです。
長谷部さん:子ども同士の反応が参考になると思っていて、やってほしくないことはやめてと言うし、変だったら変なのって言う。そのまま伝えるのが正しいなと思っています。変に気をつかって何も言わないとか、違和感がありますし。
以前、娘が汚れた手で何か触っていて、他のお子さんから「汚いな!」と言われたことがあったんです。その親御さんからすごく謝られましたが、謝られる方が逆にきついって言ったんですよ。汚いと思うのは当然の状態でしたし、お子さんは娘に対して対等に接してくれている気がしたんですね。ただ、ここは障がいがある子の育て方、捉え方によって違うかもしれないですね。
── 娘さんに対して「かわいいね」といった言葉がけをされて、すぐに受け入れられましたか?
長谷部さん:確かに、娘が1歳くらいまでは娘を病院に連れて行って「かわいい」と言われるのがちょっと嫌でした。どうせそんなこと思ってないでしょって心の中で思っていて。でも、可愛いワンピースを着せたりして連れて行くということは、どこかで見て欲しかったと思うし、かわいいねって言って欲しかったと思うんですよ。
たぶん何を言っても素直に受け入れられない時期もありますが、後々、嬉しかった言葉だったなと思うかもしれない。なにより、何も言わない方が不自然な気もするので、かわいいねとか、おめでとうといった言葉も普通に言っていいと思います。
また、自分の知り合いや、実は親戚にもダウン症のある人がいるんだとか、ダウン症に限らず自閉症のある人がいるよといった反応は距離を感じなかったですね。
一番よかったのは今まで通り接すること。私の弟たちは、私が娘を出産したとき「姉ちゃん大変だったね」のひと言もなく、いつも通り接してくれました。8月に出産をして、お盆の帰省で実家に親戚で集まる予定でしたが、たぶん両親も弟たちに言ったと思うんですよ。姉ちゃん今ね、娘を出産してこんな状態だって。弟たちは子どもたちを実家に連れてこない選択もあったと思いますが、例年通り、姪っ子を実家に連れてきて、いつもとまったく変わらない態度で接していました。
一番下の弟は、自分の会社を大きくして、将来私の娘にお茶だししてもらうとか、娘が働けるような会社にすると言っていたし、私が描けなかった将来も語ってくれたりして。こんなこと言ったら姉ちゃんショックなんじゃないかと思わずに、わからないことは素直に聞いてくれましたし、私も、今でも冗談で「ほんと忘れてないからね。お茶汲みさせてくれるんだよね(笑)」と言っています。
PROFILE 長谷部真奈見さん
慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、 JPモルガン証券に入社。投資銀行部門にて、M&A(企業の合併・買収)のアドバイザリー業務に携わる。ニューヨーク本社にて勤務中、2001年「9.11世界同時多発テロ事件」に遭遇したことを機にテレビ局へ転職。報道番組の記者兼キャスターを務め、現在はフリーアナウンサーとして活動中。2008年8月に第一子を出産して1児の母。
取材・文/松永怜 写真提供/長谷部真奈見