保護猫と暮らす情報番組では猫への優しい笑顔や接し方が人気のティモンディ・前田裕太さん。プライベートでも2匹の愛猫と一緒に暮らしています。そんな猫との話、趣味や料理、夢についてお聞きしました。
猫たちのおかげで、自宅に帰る理由ができた
── 現在、愛猫ノエルとリオンと一緒に生活をされていますが、なぜ相棒に猫を選んだのでしょうか。
前田さん:もともと猫が好きで、猫を飼いたいと思っていたんです。もちろん、犬も好きで、大型犬とかもめちゃくちゃ可愛いですが、仕事柄、毎日散歩をするのも難しいから。猫だと自分で好きなように時間を過ごしてくれるし、トイレも全自動トイレというのがあって、常に綺麗な状態で。飲み水とご飯さえあれば、基本的に自由にしてくれるので、猫のほうが今の僕のライフスタイルにも合っていると思いました。
── 猫と暮らしていてよかったと思うことはありますか?
前田さん:たくさんあります。ただ、一番は自宅に帰る理由ができたことですね。それまでは根なし草というか、別にどこに泊まってもいいという感覚でした。仕事が終わったその帰りに近くのホテルで寝泊まりして、翌朝そのまま別の現場に行っても全然OKなタイプで。
でも、猫と生活するようになってからは自宅にドロップピンがちゃんと刺さっている感じです。守りたいと思う生き物がいることで、少しずつ責任感も生まれてくるのを感じています。部屋もめちゃくちゃ汚かったれど、猫が誤って口に入れそうな小物は高いところに置くなど気をつけるようになり、自然ときれいになっていきました。
── 猫ってクールな性格だけど帰りを待ってくれたりしますよね。
前田さん:寝てるとベッドに来てくれるし。それに猫がいると、いい意味で“音楽が流れている”ような感じ。僕ひとりだとシーンと部屋が静まり返るけれど、ほどよいにぎやかさになるというか。すごくいい距離感なんです。
猫が甘えてくれたら、同じ熱量で返したい
── 猫と触れ合うときに大切にしていることはありますか?
前田さん:動物は、人間のご機嫌を取るための生き物ではないと思っていて。僕にとっては、共同生活の仲間であり、僕も猫も同じ生き物、というか。猫が僕のそばにきてくれたときは一緒に遊ぶし、猫が自分の時間を過ごしているときは邪魔をしたくないなと。
── 前田さんが保護猫を預かる『嗚呼!!みんなの動物園』では、猫が前田さんの隣に来るとそっと頭をなでてあげたり、「頑張ったね」と声をかけてあげたり、なんて優しいんだろうと、いつも心をくすぐられます(笑)。それは前田さんが、猫としてではなく、一緒にいる存在として受け止めているからなんですね。
前田さん:僕は一緒に生活しているだけなのでわかりませんが(笑)。猫が甘えてくれたら、猫の熱量に合わせて返してあげるようにしています。
イタリアンが得意「だけど人に振る舞うことはないですね」
── 前田さんは料理上手としても知られていますね。
前田さん:大学時代から芸人になってからも含めて計7年くらい、塾の講師のアルバイトをしていたのですが、同時並行で週3日くらいイタリアンレストランでも働いていて。まかないも作っていたので、自然と料理が身についたのかも。
── 得意料理はありますか?
前田さん:トマトを使うメニューはバイト時代からたくさん作っていましたね。テレビ番組でカメラが入っているときは、なるべくいろんなものを作るようにしていますが…。
── 友達にふるまったりも?
前田さん:いや、全然。友達少ないですし、にぎやかな雰囲気も得意じゃないんです。
── オフはどんなふうに過ごされていますか?趣味は?
前田さん:人の平均寿命って80年くらいじゃないですか。興味があることをやらないまま人生を終えるのはもったいないから、いろいろ試したりするんですけど、最近は、盆栽を始めました。もうちょっと早く始めておけばよかったと思うのですが、松と桜の木を1本ずつ、それぞれ4、5年くらいの若い木を家で育てています。
手入れも簡単で、水をあげるだけ。枯らさなければいいので。小さいけれど、季節を瞬時に感じられるところが気に入っています。今、桜にちっちゃいツボミみたいな芽が育っているんです。早く咲かないかなあ。
「不幸の総量を減らすこと」が今の目標
── 叶えたい目標や夢はありますか?
前田さん:そうですね…幸せになること、ですかね。
── 究極ですね。
前田さん:きっとみんなそこを目指しているんですよね。ただ、最近は、幸せになることが本当の幸せではなくて、「不幸ではない」ことなんじゃないかなって。「不幸だな」「つらいな」と思うことを減らすほうが、「幸せ」に近づいていくのかなと思うんです。だから、なるべくストレスを消化したり、ストレスの原因とぶつからないようにしたりすることを心がけています。
── ストレスの消化方法は?盆栽や猫との時間ですか?
前田さん:いや、盆栽や猫などで消化しようとしても、結局、ストレスの総量は変わらないままで、ごまかしているような気がするんです。「幸せ」がいくら増えても、「不幸」が減らなかったら、心の負荷はゼロにはならないというか。何かで気を紛らわせようとしても、結局しんどさは変わらないので。
それなら、考え方を変えるか、根本から向き合い方を変えたほうが、「不幸ではない」に近づくのかなと思って。最近は、「不幸」と感じることを減らしていこうと試していて。
昔は、「ハッピーなことで埋め尽くせば幸せな人生なのかな」と思っていろいろやってみたのですが、結局、夜寝るときに思い出すのは、ネガティブな気持ちになることだったりするんですよね。
──「あの人にこんなことを言われたなあ」とか、思い返すときもありますよね。
前田さん:100の幸せがあっても、50の不幸があったら、50の不幸のほうがこたえるなあとか。不幸の重さを10くらいにしたら心が軽くなったということもあって。
結局、自分自身がストレスの原因をつくっているんだろうなとは思いますが、高岸とかカラカラで明るい人を見ると…(笑)。もちろん、そういう人にも苦労はあると思いますが、僕は一つひとつを真面目に受けとめる性質みたいで。変わっているのかなぁ…マネージャーからはサイコパスって言われたりもしますし(苦笑)。
── そんなことは(笑)。でも、相方の高岸さんは確かにテレビではいつも明るい感じですよね。
前田さん:うらやましいですよ(笑)。高岸のように生まれていれば幸せなんだろうなと思うときもあります。ちなみに高岸は末っ子なんです。愛をたくさん受けながら育ってきたんだなあといつも思いますね。
── 生まれた順番は性格にも影響を与えそうですよね。前田さんは長男さんですし、誠実なお人柄が伝わってきます。
前田さん:あはは!とにかく僕らに与えられたものを活かしながら、なんとか器用に生きていく必要があるなと思います。これからも頑張ります(笑)。
PROFILE 前田裕太さん
1992年、神奈川県出身。高校からの友人、高岸宏行さんとお笑いコンビ・ティモンディを結成。前田さんはツッコミ・ネタ作り担当。「やればできる!」を持ちネタにした漫才で数々のバラエティ番組に出演、また現在、NHK『天才てれびくん』にMCとしてレギュラー出演中。文武両道を活かしたラジオ番組やコラム連載など多方面で活躍。
取材・文/高梨真紀 写真提供/前田裕太、グレープカンパニー