再婚​​して2児の母に

クリスマスに

── 28歳のときに再婚されました。

 

五月さん:彼は私よりも16歳上で、お互いに結婚して子どもを持ちたいという気持ちが一致したこともあり、出会ってから結婚まで2、3か月ほどで進みました。お互いの両親も暖かく迎えてくれました。

 

── お子さんが生まれた後、お仕事との両立はいかがでしたか?

 

五月さん:祖母から「妊娠は病気じゃないから稽古はしなさい」とも言われて臨月までお稽古をしました。出産後も1か月の検診が終わってから舞台に復帰することができました。私が舞台に立っている間は、子どもを両親やお弟子さんに預けたり、稽古の際には、私自身が子どもを背負ってやることもありました。まわりの人の手助けもあり、家元と子育てを両立しています。

 

── 子育てにおいて、おばあさまやお母様とはどう関わっていますか?

 

五月さん:母からの口出しは少なく、祖母は昔ながらの知恵を共有してくれます。ときどき昭和時代の価値観で「子どもには絶対に靴下を履かせるように」「母乳育児をしなさい」と言われると、今は令和の時代なのにと思うこともあります。とはいえ、幸いにも祖母は舞踊を一番に考えてくれますし、子育てにおいても理解してくれていると思います。

 

── お子さんは現在、上の子が2歳、下の子が1歳ですが、イヤイヤ期はありますか?

 

五月さん:まさにいまイヤイヤ期真っ最中です。今日は寒いからこの服を着ようねといっても、この洋服は着たくないといってなかなか着替えない。他にも、この食べ物は食べたくない、行きたくないと言われることも。私の場合、子ども以外にも家元としてお弟子さんのお世話などにも気を配る立場です。正直、子どものことばかりに時間を取れないこともありますが、なんとかやっています。

 

── 現在、2歳になる五月さんのお子さんが舞台に立たれるようになりました。指導には気をつけていることがあるのでしょうか?

 

五月さん:子どもの自己肯定感を大切にして、自己肯定感が上がるようなアプローチを心掛けています。同時に、昔ながらの教育として「駄目なものは駄目」と明確に伝えることも重要です。これから先、子ども自身が日本舞踊の世界を楽しみながら続けてくれたらと考えています。

 

​​── 五月さんは、これまで日本舞踊界の異端児として改革を行ってきました。今後の活動はどのようにお考えでしょうか?

 

五月さん:時代とともに、日本舞踊の魅力を知る人が少なくなってきています。伝承者の一人として、日本舞踊の魅力を一人でも多くの人に伝えたいと考え、数年前までは、派手な身なりや楽曲、演出を行うことに必死でした。しかし、今は、先輩方の助言やお客様のお声をもとに、古典舞踊の魅力に再び焦点を当てつつ、同時に新しい時代に合わせた日本舞踊の魅力を伝えたいと考えています。子どもたちにも自然と日本舞踊に触れることでその素晴らしさを知り、次世代に伝えられる人になってもらえたらと願います。

 

PROFILE 五月千和加さん

東京都出身。2歳の時、国立大劇場にて初舞台。現・五月流 流祖である五月千王から手ほどきを受ける。現在は、舞台出演、五月流の運営、門弟への指導に加え、メディアを通じての活動も行っている。

 

取材・文/間野由利子 写真提供/五月千和加、株式会社エイジアプロモーション