2012年からニコニコ動画でも活躍を始めた小林幸子さん。CD手売りにプロレス参戦、子ども食堂の支援。演歌のステージから今までになかった扉を開いていって──。(全4回中の3回)

気づいたらラスボスと言われていた

── 2012年からニコニコ動画でも活躍されています。歌謡界の第一線で活躍されている小林さんがインターネットの世界に参入されて、当時は驚かれた方も多いかと思います。ニコニコ動画のお話を聞いたときの心境は、いかがでしたか?

 

小林さん:全然知らないジャンルだったので、事務所のスタッフに「ニコニコ動画って何?」って聞きました。そしたらスタッフが「知らないんですか?ニコニコ動画とはこうでこうで、これからは絶対ネットの時代ですから…!」と熱く語るわけですよ。私はニコニコ動画もネットも未知だったけど、スタッフがそこまで言うならと乗りました。

 

── いざ、参入されていかがでしたか?

 

小林さん:面白いですねぇ。顔が見えなくなるくらいコメントがたくさんくるし、何なのこの映像!って。何か喋ったら反応がすぐにくる。リアルタイムで会話できるんだ…!って、面白くなっちゃって。今の若い子たちと目線が一緒になれるしすごく嬉しいです。

 

また、ヒャダインさんの楽曲『ぼくとわたしのニコニコ動画』を盆踊り風にアレンジして歌ってみたら、動画を投稿したら3日で100万回再生になったんです。一時はボカロもたくさん聞きました。もちろん演歌を忘れたわけじゃないですよ。演歌はもちろん大事にしていきますが、今までにないジャンルに触れるのはいいなと思いました。

 

── しかし、小林さんほどの大御所の方が。当時は今ほどメジャーではなかったネットの世界で活動を始めたのは勇気があったからですか?それとも柔軟性があったのでしょうか。

 

小林さん:好奇心かな。言われましたよ。小林幸子がネットの世界に入った。落ちぶれたなって。私は歌の世界に落ちぶるも落ちぶれないもなくて、思いが本気だったら全部一流だと思ってます。

 

それに、自分でも不思議なことにやろうと思ってやってるわけじゃなくて、気づいたら楽しくてやっていただけの話なんですよ。うちのスタッフもどんどん新しい仕事を持ってくるし、私、断れないでしょ(笑)。自分でも興味がありますし、スタッフもたぶん私がやるだろうなという前提で仕事を持ってきますから。

 

── 小林さんが「ラスボス」と呼ばれるようになったのもこの頃からでしょうか。

 

小林さん:私は全然知らなかったのですが、実はその当時30年近く前から、私の紅白衣装がゲームの最後に出てくる「ラスボス」に似ていることから、ゲームやネットの世界では言われていたそうなんです。2012年ニコニコ動画の生放送に初めてでて、みんなが「ラスボス!ラスボス!」って書き込むので何かのニックネームかと思っていました。司会の方が「すみません、ユーザーがラスボスって呼んでもいいですか?と聞いているのですが、いいですか?」と言うから「どうぞ」と言ったら、画面が「ラスボス」でいっぱいになって、公認になった!!と。番組が終わってスタッフにラスボスって何?って聞いたら、「ラスボスっていうのは、ゲームの最後に出てくる絶対敵わないボスなんです」と。え?悪いやつじゃない?と思ったけれど、ま、いっか、みんなが楽しんでくれるならって。そこから公にラスボスって言われてます(笑)。

 

「ラスボス」という愛称でも今はお馴染み、小林幸子さん

── さらにコミケやプロレスにも参加されました。

 

小林さん:コミケは楽しかったです。予想よりたくさんの方が並んでくれて、ものすごく久しぶりの手売り。しかも来てくれる方が、ほとんどコスプレしてくるんですよ。女の子に「そのコスプレ、カッコイイね」と言ったら「ええ!コスプレの女王に褒められた」って。私、紅白衣装の影響でコスプレの女王になってたみたい(笑)、周りを見れば魔法使いがいたり、いろいろな人がいて。みんなそれぞれの楽しみ方があるんだなって思いました。

 

プロレスは、いくら何でもさすがに驚きました。スタッフから「ニコニコ動画のイベントやるからどうですか?」と言われて、「何?私がプロレス?格闘技はまったくわからない」と言いましたが、「いやいや、ひとつのイベントみたいな形ですから」「面白いの?」「面白いです」って、また丸めこまれてやってました。結果たのしかったです(笑)

 

── ちなみに演歌・歌謡曲のファンの方からコミケの参加者、ニコニコ動画を観ている方など、ファン層も広がったのでしょうか。

 

小林さん:そうですね!私は小林幸子という名前がありますが、デビュー当時はチビちゃん。次はさっちゃん、幸子さん、小林さんと呼ばれて今はラスボスとも呼ばれてます。今、子ども食堂の支援も始めて子どもたちに会う機会もありますが、子どもたちは私が演歌を歌ってることはほとんど知らないんです。でもラスボスは知っています。それはそうですよね。幼稚園とか小学生くらいの子は演歌を知りませんから。だから世代も含めてそれぞれの名前で呼ばれています。