仕事に家事、そして育児に。共働きの人にとっての当たり前は続きます。元TBSアナの竹内香苗さんもそのひとり。目まぐるしい日々のなかで気づいた価値観があるといいます。(全4回中の4回)

 

ニコニコ!竹内さんの5人家族がひまわり畑の前で撮ったプライベート写真

「サッカー、野球、ピアノ」子どもの送迎でバタバタな毎日

── 現在9歳と7歳の男の子、4歳の女の子のママとして、子育て真っただ中の竹内さん。育ち盛りのお子さんが3人もいると、家の中は賑やかでしょうね。

 

竹内さん:毎日、あっというまに1日が終わって心身が消耗しています(笑)。産後や乳幼児期の大変さは広く知られていますが、幼稚園、小学校と成長するにつれ、直接的に世話をすることは減るものの、間接的に見守らなければならないことも多くて複雑になり、大変さが増している感じがします。

 

とくに、学校関連や子どもたちの習いごとなど、3人全員と自分のスケジュールを調整するのが、とにかく大変で…。

 

── 局アナ時代に磨かれた時間管理のスキルが子育てに生きていたりするのでしょうか?

 

竹内さん:いえ、子ども相手だとまた別で、わが家は毎日ギリギリの綱渡り状態(笑)。いま、長男がサッカーをやっていて、次男が野球、末娘はピアノを習っているのですが、それぞれの送り迎えが重なったり。

 

他の予定もあるのでスマホのカレンダーアプリに全員の予定を入れて管理していますが、ハプニングもいろいろあるので、つねに時間を気にしながら動いている感じです。

 

── 自我が芽生え、反抗期や思春期に差しかかる年代の子どもたちと向き合うのは、すごく労力を要しますよね。

 

竹内さん:小さな子どもとはいえ、年齢的にも幼児ではなく自我もあります。けれど、未熟で自分たちだけではできないことや失敗も多いので、親がしっかり見守って心身のケアをしなくてはいけないなかで、正解がない難しさをすごく感じています。

 

── まだ自我もうまくコントロールできないですし。

 

竹内さん:そうなんですよね。年齢が近いせいか、きょうだいげんかがすごく多くて、夏休みなんて3分に1回くらいケンカしていましたから(笑)。長男と次男だったり、末娘と長男だったり、組み合わせもさまざま。“そんなにケンカするなら、離れていればいいのに”と思うのですが、それでも一緒に遊んでいるんですよね。

 

こどもの日にきょうだいピアノデュオ「レ・フレール」のコンサートロビーで

── きょうだいげんかを仲裁するときに、気をつけていることはありますか?

 

竹内さん:心がけているのは、両方の言い分をきちんと最後まで聞くようにすることです。悪いことをしても、頭ごなしに叱ったり、否定したりするのではなく、まずは「なぜそうしたか」「どうしてもそう思ったか」と、行動の理由と気持ちをしっかり聞くようにしています。これがなかなか難しいですが…(笑)。

 

── つい、「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」とか「女の子でしょ」という叱り方をしてしまうという声も。

 

竹内さん:そこは気をつけたいと思っています。私自身、子どものころに「女の子でしょ」などと言われるのがすごく嫌だったので、属性で決めるような言い方はしたくないなと思っています。

子どもに伝えるのは「時間を守る」「人を傷つけない」

── そうした考え方は、海外で過ごした子ども時代や、海外での子育て経験も影響しているのでしょうか?

 

竹内さん:子どものころにアメリカで暮らしていた影響はあるかもしれないですね。アメリカでは、兄や弟という言葉自体がそもそもないので、きょうだい間の序列があまりなく、横並びの感覚なのかなと感じました。だから、年齢で上下関係や優劣をつけたくないとは思います。

 

── たしかに、欧米はファーストネームで呼び合いますもんね。竹内さんが、子育てにおいて意識していることはなんでしょうか?

 

竹内さん:初歩的なことですが、時間やルールを守る、人を傷つけない、思いやりなど社会のマナーや行儀作法については、厳しく伝えるようにしています。

 

あとは、「ありがとう」「ごめんなさい」がきちんと言える人になってくれれば十分かなと。どういう道を進むかは本人たち次第なので、私から「これを習いなさい」「勉強しなさい」とは言わないです。

 

竹内さんの数少ない特技がローラースケートだとか

── シンプルですね。あえてそうしているのですか?

 

竹内さん:気になることは山ほどあるのですが、注意し出すときりがないというか、無限にありすぎて、「これは絞ったほうがいいぞ」と思ったんです(笑)。

 

── なるほど。共感します(笑)。

 

竹内さん:「どうしても譲れない」ものだけを決めて、それ以外は「まあできればやってほしい」くらいの感覚でいようと考えました。そうでないと、ずっと注意している状態になって、メリハリがつかなくなってしまう気もして。

 

そうしたときに、社会で生活していくためのルールと、人としての礼儀はやっぱり大切だから、そこは譲れないなと。逆にいえば、「そこさえ守ってくれれば、なんとかなるか」と思うようにしています。

 

── 注意するのもメリハリが大事だと。子どもにとっても、守るべきことがシンプルで明確なほうがわかりやすいですよね。

 

竹内さん:そうだといいなと思っています。だから、子どもがケンカしたときも、相手を傷つける言葉を言ったり、乱暴をしたりしたときは厳しく注意します。

 

── ちなみに、ご夫婦で決めているルールはありますか?

 

竹内さん:“お互いのやりたいことを制限しない”というのは、暗黙のルールになっている気がします。これまで私がやりたいことに対して、夫に嫌な顔をされたことは一度もないと思います。「こういう仕事がやりたい」と言うと必ず応援してくれますし、泊まりの仕事や、友人と食事に行って遅くなるときなども協力してくれます。

 

逆に、私も夫の仕事や趣味などについて、やりたいことを否定せず協力したいと思っています。お互い家庭に悪影響がなければ尊重する感じで、いまのところはそれでうまくいっているのかな(笑)。

 

── 夫婦ケンカの原因として、よくあるのが「自分ばかり我慢している気がする」という不満です。竹内さん夫婦が尊重しあえる秘けつはなんでしょう?

 

竹内さん:自分のやりたいことを制限されないから、自然と相手のことも尊重しようと思うのはあるかもしれません。お互いに否定や非難をしないと思えるから、「これをやりたい!」と言い合えてラクです。とはいえ、家庭と仕事の両立や、家事育児の分担については、お互い不満に思ったり、もめることももちろんあります。

3年前から企業の社外取締役に「会議は緊張し放しでした」

── 2020年から、SBIホールディンクスの社外取締役に就任されています。どういった経緯だったのですか?

 

竹内さん:SBIホールディングスの北尾吉孝社長とは、「この国の行く末2」(BSフジ)という番組で、2年ほどご一緒させていただいていました。ちょうど番組が終わるタイミングでお声をかけていただいたのですが、そのときは驚きました。

 

金融業界での経験もなかったですし、“自分に務まるのだろうか”と不安もありました。でも、北尾さんのことをとても尊敬していますし、お声をかけていただいたのだから、私のこれまでの経験が少しでもお役に立てれば、自信はないながらも精一杯頑張ってみようと思いました。

 

── 抜擢の理由について、北尾さんからはどんな言葉があったのでしょうか。

 

竹内さん:これまでメディアを通じ、社会に向けて発信する番組づくりに携わってきたキャリアや海外生活で培った経験などを活かしてほしい、と。とくに、取締役会においても女性を含む多様性を推進するという会社の課題に対し、出産など女性特有のライフイベントと仕事の両立や、ワークライフバランスの実践といった観点を反映させる意図もあったと思います。

 

「この国の行く末2」収録時でこのときは第3子を妊娠中

── 社外取締役というのは、具体的にどういう活動をするのですか?

 

竹内さん:「社外からの客観的な立場で経営を監督する」というのが、社外取締役に定められた役割です。具体的には、取締役会に参加し、上程されている議案の審議に加わり、議論をします。

 

事前に会議に関する資料が配られるので、それを読み込んで確認し、私がお伝えすべきことはないだろうかと考えながら準備をします。SBIでは取締役が15名いて、そのうち社外取締役は7名です。

 

── 緊張したりしませんか?

 

竹内さん:最初はとても緊張していました。社外取締役は未経験でしたし、高度な専門知識が必要な分野でもあります。日々、業界に関する情報にアンテナを張って、新聞や専門書籍、プレスリリースなど幅広く目を通し、情報収集するよう努めています。

 

2022年からは、人材サービス事業「バイトル」などの求人情報メディアを運営するディップ株式会社の社外取締役も務めることになり、つねに学びの姿勢を大切にして、これまで培った経験を活かしてお役に立てれば、という気持ちで未熟ながら精一杯取り組んでいます。

 

PROFILE 竹内香苗さん

1978年、愛知県生まれ。東京外国語大学卒業。2001年にTBS入社後、テレビでは「王様のブランチ」「サンデージャポン」「みのもんたの朝ズバッ!」「はなまるマーケット」、ラジオでは「伊集院光 日曜日の秘密基地」など、様々なジャンルを担当。2012年にTBSを退社後、ブラジル、アルゼンチンを経て帰国。現在、ホリプロに所属し、フリーアナウンサーとして活躍中。テレビ東京「週刊ビジネス新書」レギュラー出演中。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/ホリプロ