合格率16%程度で難易度も難関大学入試レベルとも言われる英検準1級。帰国子女でもなく、日本の一般的な小学校に通いながら白川怜さんが合格した理由を探るべく、親御さんも同席のもと、話を聞きました。
「外国人の先生かっこいい」から夢中になった英語の世界
—— 英検を受ける以前に、英語を学ぼうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
怜さんの両親:私(母親)が英語を話せないこともあり、幼いころから英語になじんでほしいと思っていました。4歳のときに習い事の一環として週1回、子ども向け英会話教室・ABCキッズイングリッシュへ入れたのがきっかけです。
—— その年齢だと初めて出会う大人に気後れしたりする子もいます。しかも外国人の先生となるとハードルが高そうですが、当時の様子は?
怜さんの両親:それが、物怖じせず、いきなり先生にハグしたり。本人いわく「(外国人の先生が)かっこいい」と。3か月通ったころに、本人もあまりに楽しそうな様子に、スクール側から毎日通うスクールへの転園を進められまして。
—— 怜さんは、そのころは実際どう感じていましたか?
怜さん:日本語は禁止だったけど楽しかった。帰り道も覚えた英語、たとえば「I’m hungry」とかをつい口にしたり。お迎えのときにその日の様子を先生が英語で親に話してくれるのですが、通訳するアシスタントの先生がいても、僕が自分で翻訳して親に説明していました。
—— すごい!どうやって英語を身につけていったんですか?
怜さん:とにかく英語の世界に興味があって、ふだんから「ドラえもん」や「鬼滅の刃」など、日本のアニメや漫画を日本語版と英語版を交互に見たり読んだり。日本語が英語でどう表現されているかを確認したり、英語の文章や単語を予測しながら読み進めました。
単語を覚えるために自作の英単語帳を作る日々
—— ほかには、英語と接点をもてる機会はありましたか?
怜さん:小学校は一般的な学校だったので、週に数回、英語の授業があって、あとは英会話教室に通う程度でした。ただ、小2と小3のときにそれぞれ1か月間くらい、ニュージーランドのオークランドの地元の小学校へ、家族みんなで短期留学しました。
怜さんの両親:知り合いのつてで夏休み期間を使って留学したんです。日本にいるときは「先生と生徒との関係」での英語のコミュニケーション。しかし、現地に行けば子ども同士のふれあいがあり、英語を文化圏とした人の感覚やコミュニケーションも学べると思ったからです。
—— でも、さすがに人種も違うし、突然、集団の中に入る転校生的な感じでビビったりはしなかったんですか?
怜さん:最初から「ハーイ!」といって入って、ふつうにとけこめました。むこうの文化として、転入者に対して積極的に声をかけてくれるんだと思います。
授業自体は日本のほうが高度ですが、算数は専門用語やスラングなどがわからないことも。友だちが優しいから、教えてもらいながら授業が受けられました。楽しい思い出しかないです。
怜さんの両親:勉強というより、異文化に触れたりコミュニケーションが大事だと思っていたので、とてもいい体験だったと思います。学校のイベントでディスコナイトがあったり。そのうち、寝言も英語になってました(笑)。
—— たしかに子どもにとっては“好き”や“楽しい”の先に学びがありますからね。ところで、英検はどうして受験しようと考えたのでしょうか?
怜さんの両親:英会話教室に通うなかで、自然と受ける形になりました。みんなが受けるから一緒に受ける感じで、最初はジュニア英検でした。そうこうしているうちに、小1で英検2級に合格して。ただ準1級から難易度が明らかにあがるんです。単語力や高度なライティングのスキルも必要になります。
準1級は小4で受けたのですが、不合格でした。受験科目はリスニング、リーディング、ライティングとスピーキングがあります。リスニングやスピーキングには本人も自信があったのですが、リーディングやライティングは語彙力が課題で。サイエンスやソーシャルに関する大人向けの文章が多くなるので、小学校低学年では解くのに厳しいテーマではあります。
怜さん:言葉の意味がわからないとどうしようもないかなと思って、自分で語彙力を上げるために、単語帳を作ることを日課にしました。イラストを描くのも好きだから単語の意味をイメージしながら、絵で表現しながら覚えるように。でも、イラストにもこだわるから、作れるのは週にだいたい10ワードくらいで(笑)。
小さいころから英語で書かれた本や図鑑を眺めるのが好きで、あとはYouTubeもよく観ていました。英語の勉強の意識はなくて、好きなゲーム実況やアニメについて海外の人はどう観ているのかなと思って、興味の延長線上で海外の人の動画を観ていた感じです。
怜さんの両親:だんだんと語彙力や文章力もあがっていき、直前に過去問を2、3回行うなどもして、小5で準1級を受けてみたら、合格できたんだと思います。
—— 現在は怜さんも中学生になって、どういった変化がありますか?
怜さん:中高一貫校の国際クラスに入ったので、週7コマ、英語を学んでいます。弁論大会が学内であるんですが、日本語と英語の大会にわかれていて英語で出場しました。予選を突破して、本戦では優秀賞(第2位)をもらいました。
—— そこまで英語をエンジョイしている怜さんにとっての、夢や目標ってありますか?
怜さん:大きな希望や夢は具体的になくて、ただ、この数年はコロナ禍で外国にもいけなかったことが心残りです。
できれば小学校のときに短期留学をしたオークランドにまた行きたい。24時間英語づけで、かつ、メールのやりとりを続けている当時のクラスメートと再会したいです。楽しさもあるし、自分の英語がどこまで通じるかを実感できる場でもあるので。それがいま目指していることです。
—— 本当に英語が好きで、文化的にも肌が合うことが伝わってきました。これからが楽しみですね。
取材・文/西村智宏 撮影/新井加代子