夫の健康は大事。でも、だからといってそのためだけに妻が犠牲を払うのはちょっと違う。「夫が糖質制限したくて食事にクレーム」をつけてきた夫に40歳の妻が抱いた夫への疑念、そして取った行動は?
「ポテトサラダは糖質が多い」と言い放った夫
夫が健康診断でひっかかり、「生活習慣病の予備軍と言われた」と、話すミチコさん(40歳、仮名=以下同)。結婚して10年、3歳年上の夫との間に9歳と7歳の子どもがいます。結婚後も共働きで、コロナ禍以降、在宅ワークが増えて出社しなくなった分、子どもと一緒にいられる時間が多くなったそうです。
「子どもの帰宅時間に私も少し休憩するなど、メリハリをつけて仕事をしています。ただ、夫は在宅で仕事をしている私に、『家にいるんだから、もうちょっと掃除でもしたら?』などと言うようになりました。家で遊んでいるとでも思っているんでしょうか」
そんな夫が「糖質制限する」と言い出しました。ごはんやパンなどの炭水化物摂取を自分で調整するのだろう、とミチコさんは考えていたそうです。ところが、夫はおかずにまであれこれ口を出すようになりました。「ポテトサラダは糖質が多すぎる」「もっとタンパク質を増やして」など、毎日のように夕飯にクレームをつけてきます。
「うちは基本的に子どもに合わせてきたんだから、自分で調整してくれないと困ると言ったら、『妻なのにやってくれないの?』と言うんですよ。別の食事を作れということ?そもそも私、ほぼワンオペなんだけど、と不満を一気にぶつけてしまいました。
夫が妻の在宅仕事に対して、「ラクしていいな」と言ったことや家で遊んでいるような言い方に対しても怒りが爆発したのです。
言い合いの末「糖質制限の弁当は作れません」と逆宣言
「これまで夫のお弁当も作っていましたが、その日からやめました。大ゲンカになった翌朝、夫はいつもお弁当が置いてある場所をキョロキョロ探していましたが、知らん顔していたら出かけていきました。夫にLINEで、『糖質制限の弁当は作れません』とメッセージを送っておきました」
それもまた夫の気持ちを逆なでしたのでしょうか。それから3週間ほど、ふたりはほとんど口をきかなかったそうです。
「先日、起きたらゴミ箱にはカップラーメンを食べたらしい形跡が。なにが糖質制限だとますます腹が立ちました。夫にそれを指摘すると、『ストレスがたまって、つい食べちゃったんだよ。きみが協力してくれないからいけないんだ』と、また私のせいにするんですよ」
本気で糖質制限が必要なら、医師や栄養士と相談して真剣に取り組めばいいし、協力できるところはするつもりもある、と彼女は夫に伝えました。すると夫は「きみにはその気がないんだよ。どうせオレより子どもたちのほうが大事なんだろ」とすねてしまったそう。
「糖質云々より、あなたのその態度のほうが問題なんじゃない?と思わず言いました。『私はあなたの母親じゃないし、あなたも大人なんだから、自分の健康は自分で管理してよ。私だって、栄養のバランスを考えて作っている。量を調整するくらいできるでしょ』と言うと、『オレが倒れたら、困るのはきみたちだよ』と捨てゼリフを吐いて出社していきました」
子どもより聞き分けがないと、ミチコさんは苦笑します。大人ふたりで子どもふたりを育てるはずが、自分ひとりで3人の子どもの面倒をみているようで、身も心もいくつあっても足りないとグチをこぼしました。
「ときどき思いますよ、こんな夫、いつか捨ててやるって。何でも妻がやってくれると思っていたら大間違いですよね。結婚当初から、『いい妻』でいようと頑張ってきたけど、それが間違っていたのかもしれません」
夫をいまから変えようと思っても遅いかもしれないけど、この先、何があっても生活できるように、「夫の生活能力育成」は必要。それを痛感していますと、ミチコさんは真顔で話してくれました。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里