「水を1日2リットル飲むと体にいい」とよく言われています。ただし、一般の人には伝わりきれていない実情もあるそうです。消化器内科医の工藤あきさんに聞きました。
水分がたりないと「しわ」に影響する?
── いつまでも若々しく健康的でいることは、誰しもあこがれるものです。そのためには、食事に気を配ったり、サプリや美容法を試したりと、努力をしないといけない。何か手軽な方法はありませんか?
工藤先生:身近なところとして、水分の摂り方を見直してみてはいかがでしょうか。水はアンチエイジングや健康、さらにダイエットにも有効な最高のサプリといえます。
人間の体の多くは水分で形成されていますが、赤ちゃんのからだは体重の約80%が水分なのに対し、65歳以上になると約50%まで減ります。肌のハリやみずみずしさを比べてみても、体内の水分量が老化に関係していることがわかります。十分な水分を摂取できているかで、同じ年齢でも「肌のうるおいやしわの多さ」に差が現れてきます。
── 水分がたりないと、老けて見える原因になりかねないのですね。
工藤先生:はい。化粧品などで外側からの保湿をするだけでなく、内側からの水分補給も大切なんです。他にも、水を飲むメリットはたくさんあります。水分を摂ることで血流がよくなり、栄養がスムーズに行きわたって細胞が活性化します。代謝も上がり、老廃物が排出されやすくなるんです。また、腸に水分が届けば便秘解消にもつながります。
逆を言えば、水分がたりないと血がドロドロになり老廃物が溜まりやすいからだになります。ひどい場合には脱水症となって命にかかわる病気になる恐れも。健康的にすごすためには、水分摂取は欠かせないのです。
体重によって違う!「水は1日2リットル」の本当の意味
── では、どれくらいの水を飲めば良いのでしょうか?
工藤先生:よく聞く「1日あたり2リットルの水を飲むといい」という説は間違いではないのですが、年齢や体格で必要な水分摂取量は異なります。「体重1キロあたり35ミリリットル」を基準にしましょう。体重50キロの人であれば1750ミリリットル、体重60キロの人であれば2100ミリリットルとなります。
また、水分は飲むだけではなく食事にも含まれます。3分の1〜2分の1程度は食事から摂取すると考えれば、体重50キロの人なら飲み物から摂取するのは、1000ミリリットル程度が目安です。ただ、夏場は汗をかいて水分も失われやすくなるため、目安量に加えてコップ1杯分(200ミリリットル程度)多めに飲むなど調整しましょう。
── 水分はコーヒーやジュース、アルコールなどからとっても問題ないのでしょうか?
工藤先生:コーヒーなど、カフェインが含まれた飲み物や、ビールなどアルコールには利尿作用があるため、水分を摂ったつもりでも逆に水分が出ていきます。そのため、コーヒーやアルコールを飲んだ後にトイレが近くなったと感じるようなときは、むしろ意識的に水を飲むようにしてください。
ジュースも糖分の過剰摂取が心配されます。コーヒーやジュースだけで水分量を補うのは避けましょう。水分補給の基本は水。そのほかの飲み物は、あくまで嗜好品として、1日の水分摂取量とは区別してお楽しみください。
ガブ飲みは「むくみ」や「体調不良」の原因にも
── 水を飲む際に、気をつけるポイントはありますか?
工藤先生:水分補給に関しては、「飲み方」も大切です。一度にたくさんの水をガブ飲みしても、腸が吸収しきれないまま体外に排出されてムダになります。体内の水分量は、適度に一定の量を保たれているのが理想です。コップ1杯程度の水を、わけてこまめに飲むのが理想でしょう。
とくに水分が不足しがちになるタイミングは、「寝起き」「運動の後」「入浴の前後」「就寝前」なので、忘れずに水を飲むように心がけてください。
── 運動後や暑いときに、のどがカラカラでガブ飲みしたくなりますが、よくないのでしょうか?
工藤先生:のどが渇いているのは、からだの水分量が不足しているサインなので、もちろん我慢する必要はありません。熱中症を防ぐためにも適切に水分補給をしてください。
ただし、飲みすぎは禁物です。例えば、お腹がチャポチャポするほど飲むのは余計な水分がからだに溜まっているサインです。冷えやむくみ、疲れやすいなどさまざまな不調の原因となるので注意しましょう。
PROFILE 工藤あきさん
消化器内科医・美腸・美肌研究家。一般内科医として地域医療に貢献する傍ら、腸活×菌活を活かしたダイエット・美肌・エイジングケアにも尽力。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。2児の母。
取材・文/大浦綾子