6月第3日曜日に制定されている父の日。知られざるその由来と、毎年注目を浴びるベスト・ファーザー賞の選定方法について、日本メンズファッション協会広報部の名倉さんにお話を伺いました。

父の日は「娘の嘆願から生まれた」

── 父の日の成り立ちについて教えてください。

 

名倉さん:1909年にアメリカ・ワシントン州に住むジョン・ブルース・ドット夫人が、男手ひとつで育ててくれた父親に感謝し、父親を讃える日を母の日と同じように設けてくれるよう「聖職者同盟(牧師協会)」に嘆願したことが始まりとされています。

 

父の日の生みの親!ドット夫人(右)と男手ひとつで6人の子を育てた父親のウィリアムさん(左)(C)MFU

ドット夫人のお父さんであるウィリアム・ジャクソン・スマートさんは南北戦争の際に、北軍の軍曹でした。不幸なことに従軍中に最愛の妻を亡くしてしまい、戦争が終わって帰還したあとは、再婚はせず、男手ひとつで6人の子どもたちを育てたそうです。

 

嘆願を受け、1916年に第28代ウィルソン大統領によって「父の日」が認可されました。1936年に「全米 父の日委員会」がニューヨークで発足し、この年から「アメリカの父・ベストファーザー」が発表されるようになりました。

 

── 父の日を制定している国は、ほかにもあるのでしょうか。

 

名倉さん:現在では、アメリカや日本のほかにも中国、インド、イギリス、メキシコ、ペルー等、多くの国が6月の第3日曜日を「父の日」として、いろいろな行事が行われています。

 

── 日本では、どのように父の日が根づいていったのですか。

 

名倉さん:日本で父の日が根づいたきっかけは、当協会が1982年に「ベスト・ファーザ イエローリボン賞」というコンテンツをつくり、マスコミが取り上げて新聞・雑誌掲載、テレビ放映が行われていることが大きな要因です。

 

また、それを受けて全国の百貨店や町の紳士服専門店、地域の商店街などでの父の日告知販促ツールの提供や、父の日セールといったイベントの提案をし、一般消費者の認知につながったと考えます。

 

肩たたき

初期の頃のお祝いの方法は、当時は家族での外食がそこまで発達していなかったこともあり自宅での食事や、ネクタイや靴下の詰め合わせといったプレゼントを贈っていました。子どもたちはハンカチや自作の「肩たたき券」などを贈っていました。

家族の日に

── 父の日に先立って授賞式が開催される「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」が毎年注目を浴びますが、今年もさまざまな業界から5人の方が選ばれました。受賞者はどのように選定しているのでしょうか。

 

名倉さん:選考方法は、マスコミ各社、FDC(日本ファーザーズ・ディ)評議員、過去のイエローリボン賞受賞者、MFU(日本メンズファッション協会)会員によるアンケート結果をもとに、ベスト・ファーザー選考委員会によって決定しています。

 

明るく楽しい家庭づくりをしている方、子どもたちのよき理解者、社会に貢献している方や、ユニークな子育てを実践している方など、広くさまざまな意味で「素敵なお父さん」と呼べる方を表彰しております。

 

ベスト・ファーザー賞受賞者
今年の「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」受賞者(左から)つくば市長の五十嵐立青さん、三菱鉛筆(株)代表取締役社長 数原滋彦さん、落語家の桂宮治さん、俳優の高橋克典さん、元プロレスラーの武藤敬司さん(C)MFU

── 発足当時と比べると共働きの家庭が増え、仕事だけでなく家庭の役割を大きく担っている父親も多いと思います。近年受賞された方に共通する特徴などがございましたら教えてください。

 

名倉さん:ひと昔前の父と子の関係といえば「父親の背中を見て育つ」というような雰囲気がありましたが、今では父親が料理や洗濯をするなど、母親と同様に家庭に向き合っています。育児に協力的ないわゆるイクメンや、友達感覚の親子が多くなりました。

 

── 5月の母の日にはカーネーションなどを贈るのが主流ですが、父の日は家庭によって贈り物はさまざまです。おすすめの父の日のお祝い方法はありますか。

 

名倉さん:モノではなく気持ちが大切です。一緒に食事をするなどして、ぜひともコミュニケーションをとってほしいと思います。父の日は家族で一緒の時間を過ごし、家族や子どもの将来について話し合うことが大切だと考えます。当委員会では母の日、こどもの日、父の日を家族の日としてとらえ、家族で過ごすことの大切さを提唱してまいります。


取材・文/内橋明日香 写真提供/MFU(一般社団法人 日本メンズファッション協会)