「嫁姑問題」は、形を変えつついまも厳然と残っています。「距離をとる」人が増えてはいますが、「息子の妻は義理の娘」と親近感を表に出す人も。嫁側の意識が激変しているだけに、些細なことでもモヤモヤしたものを抱える女性も多いようです。

 

1度息子を預けたら「世話好きスイッチ」が発動した義母

28歳で知り合った2歳年下の彼と同棲していたミユキさん(38歳、仮名=以下同)。35歳のとき、妊娠を機に婚姻届を出しました。

 

「仕事を辞めたくなかったので、夫に勧められるままに夫の実家近くにマンションを借りて引っ越したんです。私の実家は遠方なので、何かあったときに頼れる場所があったほうがいい、と夫の意見を受け入れました」

 

息子が生まれ、生後8か月で近くの保育園に入れることもでき、ミユキさんは仕事に復帰。夫と協力しあって、息子を送迎していましたが、ときにふたりとも時間がとれないことがあります。

 

「それでも近所のママ友さんに頼ったり、同僚が行ってくれたりと、とにかく義母には頼らないと思っていました。義母はいい人ですが、それだけに負担をかけたくなかった。いえ、本音を言えば、“わが家”に入り込まれたくなかったんです」

 

ところが、どうしても人の手配ができず、義母を頼る事態が発生しました。義母は“待ってました”とばかりに迎えに行き、そのまま息子を実家に連れて帰ってくれました。

 

「そのときはつくづくありがたいと思いました。やはり他人に頼るより、夫の母のほうが安心感はある」

 

ただ、ミユキさんがばく然と感じていた不安がその後、的中。一度頼ったら、義母は案の定、「世話好き」な本性を現すようになったのです。最新の子育て状況、いい小学校に入れるコツ、さらにはふだんの食事まで、ことこまかにLINEしてくるように。お礼のメッセージを入れると、今度は「簡単で栄養のバランスを考えたレシピ」を、ネットで拾って印刷したものを大量にくれるのです。親切心だけに断りづらいとミユキさんは言います。

大掃除をされて「キレイで気持ちいい」のに複雑な思いも

「うちにはうちの、私には私のやり方がある」と思っているミユキさんですが、義母は純粋な親切心からしているのもわかっています。文句を言えるような雰囲気ではありません。ところが先日、ついに義母は日中、家に入り込んできました。

 

「頼んでもいないのに、大掃除を始めて。イラッとしたけれど、業者に頼んだかのようにきれいになっているのは気持ちがいい。キッチンの模様替えもしたようで、どこに何を移したか、メモまで残されていました。自分の使い方を批判されたようで、やはりイラッとくるけれど、想像以上に使いやすくはなっていて…。それでも、家の中を把握されたことに不快感が拭えないんです」

 

夫は「よかったじゃん。おふくろは専業主婦歴が長いんだから任せておけばいいよ」と言うばかり。そもそも合鍵を作って渡したのは夫。それを責めると、万が一、何かあったときに家に入ってもらえばオレたちが助かるケースもあるはずだよ、と言います。

 

「たとえば、夫婦ふたりとも倒れて息子が取り残されたケースとか。そんなことあるはずないと思ったけど、ゼロだと断言もできません。勝手に入って掃除するのはやめてほしいと伝えてと言いましたが、夫は『オレからは言いづらい』って。しかたないので、私が言ったんですよ。『家の掃除はしなくていいですから』って。

 

そうしたら『あなたは忙しいんだから気にしないで。私のヒマつぶしだと思って受け入れてちょうだい』と。いつもニコニコ顔で、押しつけがましいところもないから非の打ちどころがありません。それでも不快なのは、私が狭量のせいだからかもしれない」

 

友人に相談したところ、「嫌味のひとつも言わない義母は、本当に親切なだけ。気にしなくてもいいんじゃない?」と言われました。だからよけいに、ミユキさんは「自分の心が狭いのかな」と、負い目を感じてしまうそう。

 

こういう問題、解決しようとするとお互いに嫌な思いをするのがわかっているだけに難しいですよね。


文/亀山早苗 イラスト/前山三都里