ミス・ユニバース2007で世界一に輝いた森理世さん。2019年に米国人の男性と国際結婚し、同時に当時5歳だった男の子の母親となりました。米国の「共同親権」に驚きつつも、ステップファミリーとして、息子さんとの心地よい関係性を築いてきたそうです。(全4回中3回目)

 

米国人の夫と出会って3か月で国際結婚

── 2019年5月に米国人男性との国際結婚を発表しました。出会って結婚までは数か月とかなりのスピード婚だったそうですね。

 

森さん:出会いはサンフランシスコでのパーティーでした。なぜか私の席に夫が座っていて、「すみません、そこ私の席なんですけれど…」と話しかけたのがファーストコンタクトですね。

 

私は仕事で1週間ほど滞在していたのですが、その間に彼と会うことはほとんどありませんでした。ただ、最終日のパーティーで「あの時の…!」と再会したんです。私はもう日本に帰るので「会うことはないだろう」と思っていたのですが、帰国後に夫からたくさん電話や手紙が届いて、そのなかでお互いのことを知っていきました。

 

2月に出会ったのですが直接会ったのは数回ですね。でも、5月には婚約していました。

 

── 直接会ったのは数回…!プロポーズはどのように受けたのでしょうか?

 

森さん:4月に日本にやってきて、私の家族に「結婚したい」との気持ちを伝えてくれました。5月にまた来日して、母の目の前で正式なプロポーズをしてくれましたね。

 

出会ってからわずか3か月で婚約したアメリカ人の夫とは日本で式を挙げたのだそう

── 遠距離でのスピード婚に戸惑いはなかったのでしょうか?

 

森さん:なかったですね。彼と話していて違和感がないといいますか、一緒に過ごす時間ってあまり関係ないのかなと思えたんです。直接会った回数は少ないのに、前から長く知っている感覚があって、だから信頼できたんですよね(笑)。

 

── 結婚当初は日本とアメリカでの遠距離婚だったそうですね。

 

森さん:私は当時、日本に住んでいたので「今の暮らしをすぐには覆せないよ」と彼には伝えていました。お互いに行ったり来たりの遠距離婚になるけれど、それでもいいと言ってくれたので、はじめはその結婚スタイルをとっていましたね。

息子は双方の家庭を行き来…米国の共同親権にカルチャーショック

── お相手には前妻との間に当時5歳になる息子さんがいたそうですね。離れ離れの生活で、どのように関係性を築いていったのでしょうか?

 

森さん:初めて夫と会ったときに「これが僕の息子なんだ」と写真を見せてくれたので、子どもがいることは分かったうえでおつきあいしていました。離れている間は毎日欠かさず、ビデオ通話でコミュニケーションを重ねていましたね。

 

彼はみんなにフレンドリー、というわけではないのですが、私にはすぐに心を開いてくれたと思っています。私は自分のことを「好きに呼んでいいよ」と伝えていたんです。理世でもいいし、ママでもいいし、全然違うニックネームでもよかったので。でも彼は「じゃあママって呼ぶ」って言ってくれたんですよね。

 

── 息子さんはあまり抵抗なく、森さんを家族として受け入れられたのですね。

 

森さん:もしかするとニックネームのような「ママ」かもしれないけれど、けっこう何でも話してくれるし、逆に本当の両親には言いにくい悩みとかを打ち明けてくれるんですよね。彼にとって、多分ちょうどいい“中間”にいるのだと思います。母とか友達とかきょうだいとかすべての関係性をミックスした存在になれているのかもしれません。

 

ベビーカーを押す小学生の息子さんと一緒にサンフランシスコの水辺を歩く森さん

── 森さんも母というよりは、また違う関係性を目指しているのでしょうか?

 

森さん:彼にとって生みのお母さんはいるので、決してそこに取って代わろうとは思っていません。私はパパが再婚した相手として、彼が居心地のよい家庭をつくりたい。彼にとっての母というよりは、お手本になるような大人でありたいと思っています。

 

── 息子さんは生みのお母さんと関係性が途切れているわけではなさそうですね。

 

森さん:私もかなりのカルチャーショックだったのですが、アメリカでは共同親権が当たり前なので、離婚した後も子どもはそれぞれの家庭を行き来するんですよね。息子の場合は1週間ずつ交代で過ごしていて、今はお母さんのおうちにいます。

 

このシステムには本当にびっくりしましたし、慣れるまでにかなり時間がかかりました。こんな生活は子どもにとって負担ではないのかな…と心配していたのですが、本人が「これが普通だから」とサラッと言いますし、周りのステップファミリーも似たようなスケジュールで動いているので、徐々に受け入れていった感じですね。

ステップファミリーに「これが正解で、これが幸せとの基準はない」

── 息子さんはふたつの家庭を行き来することに混乱はないのでしょうか…?

 

森さん:彼も少し大人びた小学生といいますか、この環境がそうさせているのかもしれませんが、割りきってそれぞれの生活を楽しんでいますね。

 

── 近年は日本でも「ステップファミリー」という概念が広まりつつありますが、当時は子どもがいる男性との国際結婚を不安視する声もあったのではないでしょうか。

 

森さん:もちろんありましたし、大半が「苦労するだろう」と心配する声でした。ただ私としては、息子が少なくとも私のことを嫌いではなく、後ろをちょこちょこついてきて、変なジョークや好きな女の子の話をしてくれるだけで幸せですし、ステップファミリーとして何の文句もありません。でもこの感覚は実際に経験してみないと分からないですよね。

 

世の中には本当にいろいろなかたちのステップファミリーがいるので、これが正解で、これが幸せだという基準はないと思うんです。それぞれの家族のカラーをつくり上げて、自分たちが楽しく過ごせているのならそれでいいと思います。

 

似たような佇まいで仲良く並ぶ兄妹。娘さんが生まれたことでより家族の“チーム感”が増したのだそう

── 2021年には娘さんが生まれましたが、家族のカラーはまた変わりましたか?

 

森さん:娘が生まれたことで、息子はお兄ちゃんになったので、とっても張りきっていますね。娘とは10歳も離れているので「第二のパパ」みたいな感じで、いろいろと手伝ってくれますし、娘をとても大切に愛してくれていると伝わってきます。最近は娘が走れるようになったので、ずっとお兄ちゃんの後ろを追いかけて遊んでいますね(笑)。

 

でも、息子には娘が生まれたから「僕のことはあまり気にしなくなったな」と疎外感を抱いてほしくないので、むしろ娘以上に息子との時間を大切にしています。娘が寝ている間は、息子との時間をたくさんつくっていますね。あと息子は頼りにすると喜んでくれるので、お兄ちゃんとしての役割をしっかり任せるようにしています。

 

PROFILE 森 理世さん

1986年生まれ。静岡県出身。4歳から母に師事してジャズダンスを始める。2007年、ミス・ユニバース世界大会に出場し、満場一致でグランプリに輝く。歴代最長記録となる14か月の任期を務めた。任期終了後も各国のチャリティー・ボランティア活動に従事。2009年に母とともにダンススタジオ「I.R.Mアカデミー」を設立し、アーティスティック・ディレクターとして直接指導にあたっている。

 

取材・文/荘司結有 写真提供/森 理世