外遊びが増えるこの季節。子どもに人気の砂場の砂の疑問について、全国1200か所の幼児施設などに加工した砂を提供している三洋環境社プランナーの檜垣社長にお話を伺いました。
砂の種類は大きく3つ
── 砂場で使われている砂はどこからきたものでしょうか。
檜垣さん:砂場で使う砂にはルールがないので、施設の意向やその時代によっていろいろなものが使われていますが、大きく分けて山砂、海砂、川砂があります。
── それぞれの砂の特徴を教えてください。
檜垣さん:山砂には草木の成長に欠かせない有機物を含む泥が豊富に含まれています。泥遊びをしたことがある方はご経験があるかと思いますが、特に綿素材など、洋服につくと汚れが落としづらいです。山砂は日本全国どこでも採取できるというメリットはありますが、洗浄する際に汚水も多く出ます。
海底から採取した海砂は、貝殻が混入するのでケガの危険性があります。また、塩害で遊具などがさびつく原因にもなりますので洗浄が欠かせません。
川砂は川床やダム湖底から採取したもので、粒径が丸く均一なので砂場に適しています。しかし、川から勝手に採取することは川の流れを変えてしまう恐れがあるので法律で禁じられていて、採取には必ず許可が要ります。
規制があるため値段も比較的高価になります。弊社は宮崎県の認可を受けてダム湖の底に溜まった砂を吸い上げて使用しています。
── 見た目には判断が難しいかと思いますが、それぞれの砂の見分け方はありますか。
檜垣さん:ペットボトルに砂と水を入れてよく混ぜて、水平なところに20分ほど置くと、濁りが多いのが山砂、濁りが少ないものが川砂です。ぜひお子さんと実験してみてください。海砂には小さな貝殻が入っていることもありますよ。
── ひとくちに砂場の砂と言ってもさまざまな種類があるんですね。
檜垣さん:調べた結果、文部科学省が昭和30年代に作った資料に、子どもの砂遊びの砂は川砂が適しているという文言があっただけで特に決まりはないようです。それぞれの特徴を鑑みて、子どもが遊ぶ砂場には川砂が適していると思い、弊社では川砂を加工しています。
── 最近、公園や子どもが遊ぶ施設の砂場で、さらさらして手足にくっつかない砂を見かける機会があるのですが、こちらは何か特殊な加工をしているのでしょうか。
檜垣さん:これはいわゆる焼砂で、川砂を加工したものです。弊社では砂を粒子別に分けて3回水洗いしたものを130度以上で焼いています。こちらには泥も入っていませんし、焼いているので植物の種子や菌も死滅させてある状態です。
砂遊びといえば団子作りをする子が多いですね。「焼砂には泥が入っていないので団子はできないのではないか」と聞かれることもありますが、いろいろな砂の粒形を組み合わせていますので水をかけていただくと形を作れますし、もちろん団子も作れます。乾燥して潰すと元のさらさらした砂の状態に戻って、ベタベタせずさらさらしているのが特徴です。
── この焼砂に抗菌剤をコートした抗菌砂も開発されたそうですが、研究を進めた理由はなんでしたか。
檜垣さん:自分でもここまでする必要があるかと思うことがあるんですが、20年ほど前に「砂場が汚いから子どもを遊ばせたくない」、「どう衛生的に管理したらいいかわからない」、「管理が行き届かないので砂場を無くしたい」という声を頂戴しました。
砂場をどう残していくかを考えた結果、綺麗で菌が増えにくい環境が保たれれば、きっと親も遊ばせたくなるのではと思ったんです。そのためには砂の改良が必要だと考え、遊ばせる環境に適した砂作りがスタートしました。
── 砂場が汚いというイメージはどこから来るのでしょう。
檜垣さん:菌が増殖しているイメージがあるからだと思います。でも菌が増えてしまう原因は砂そのものではなく、有機物である泥によるものなんです。弊社では泥を取り除くことで菌の繁殖を減らしたり遅らせたりするよう工夫しています。
本来は、砂に菌が含まれていても人間に害を与えるほどのものではないのですが、菌への耐性については弱い子も強い子もいますので基準はありませんし、砂場の多くが屋外で雨などにさらされる環境でもあります。
私個人としては正直、小さいときにはどろんこになって汚れる遊びをするべきだという意見です。子どもたちが土壌菌と馴れ合うことが大切だと思うんですが、それを大人が禁じようとしている。コロナ禍もあって衛生面への意識もより高まっています。
砂場は知的好奇心などを養う情操教育に欠かせない存在ですし、創意工夫や社会性を育むことができる場所です。本来は泥だらけでいいとは思っていますが、世の中のニーズからするとそれはできない。トンネル作りやままごと遊び、子どもたちにとっての大事な遊び場である砂場を守るために、安心な砂で思う存分遊んでいただけたらと思います。
取材・文/内橋明日香 画像提供/三洋環境社プランナー