子どもをおんぶしたまま仕事をする姿をTwitterに載せた、福岡放送の財津ひろみアナウンサー。Twitterにはさまざまな反響があったと言います(後編)。

急な発熱、子どもの預け先がない

── 財津さんは、普段はどのような仕事をされているのでしょうか?

 

財津さん:アナウンサーとしてニュースを伝えたり、ナレーションを担当しています。1日の大まかな流れは、朝8時45分に出社して、9時半までヘアメイク。9時半から報道部に行き、打ち合わせや準備をしたのち、11時40分から2分間の生放送を行います。その後、いったん休憩を挟み、午後はVTRのナレーション録りや、生徒のエントリーシートの添削。通常の退社時間は4時45分ですが、日によっては勤務時間をずらしてアナウンススクールの講師をすることもあります。

 

── 現在、双子のお子さんは1歳7か月ですよね。風邪などで保育園をお休みするときはどうしていますか?

 

財津さん:年次有給休暇(全休・半休)を取って自宅で面倒を見たり、病児保育に預けることもあります。ただ双子のため、1人が風邪をひいたら時間差で2人目も風邪をひくので、年次有給休暇はもうほとんど残っていないです。

45分間、上司と先輩が子どもの世話を

── 2月16日、子どもをおんぶしながら報道局で働く財津アナウンサーの写真が、Twitterに投稿されました。

 

財津さん:双子育児をしていますが、子どもの急な発熱で保育園に預けられなくなり急遽、私の職場に子どもを連れてくることになりました。職場の協力があり、なんとか乗りきることができて、感謝の気持ちでいっぱいになり、その様子をTwitterに投稿しました。

 

── 当時は、どんな状況だったのでしょうか?

 

財津さん:毎朝、夫が子どもを保育園に送ってくれますが、Twitterに投稿した日は、双子のうちの1人が登園時に37.5度の熱があり、保育園に預けられなくなってしまったのです。朝9時を過ぎていたこともあり、病児保育はどこもいっぱい。ベビーシッターも預けられない。夫は11時まで自宅で子どもを見られるものの、その後、仕事があるため子どもの面倒を見られない。

 

私は11時40分から2分間の生放送がありますが、放送前の準備に45分くらいかかります。ただ、本番さえ終われば、午後は半休が取れる状況でした。そこで、思いきって上司であるアナウンス部の部長に子どもを連れてきていいか相談してみたら、「本番中は俺が面倒みるから」とおっしゃってくれました。本番直前まで私が子どもの面倒を見て、生放送の2分間は部長にお願いすることにし、報道部にも事情を伝えて、子どもを連れてくることを了承してもらいました。

 

さらに話を聞き駆けつけてくれた先輩アナウンサーも「面倒みるね」と言ってくれたんです。大変申し訳ないと思いながら、本番直前まで私がおんぶをして、あとはお願いすることにしました。

 

財津アナ本番中、他の局員が子どもをみて

── 子どもは人見知りをして泣いたりしませんでしたか?

 

財津さん:最初、男性の上司に預けたら泣いてしまい、途中で女性の先輩アナウンサーが変わって子どもをあやしてくれました。私も子どものことは気になったものの、生放送直前だったので、思いきって先輩にお任せしてしまいました。おかげで自分の仕事に専念することができ、本当に助かりました。

 

── 財津さんの職場は、もともと子どもを連れて行っても大丈夫だったのでしょうか?

 

財津さん:前例はなかったと思います。ただ、子どもが熱を出すたびに保育園から会社に電話がかかってきていて、そのときに電話を受けた報道部のデスクが「何かあったら子どもを連れてきていいぞ」と声をかけてくれていたんです。

 

熱を出した当日、急だったためほかに預け先もなくて、「45分ぐらいなら連れてきてもいいと言ってくれるかもしれない」と思い、上司に相談させていただきました。

気になるTwitterに投稿後の反響

帰宅すると出迎えてくれる子どもたち

── 子どもをおんぶした写真をTwitterに上げたのは?

 

財津さん:写真自体は後輩が記念に撮ってくれたものです。私としては、職場のみなさんに助けていただけたことが本当に嬉しくて。子どもを会社に連れてくることがスタンダードだとは思われてはいけないなとは思いつつ、高揚した気持ちを何か書き留めておきたくてTwitterに投稿しました。

 

── Twitterでの反応はいかがでしたか?

 

財津さん:「子どもを連れてきていいといってくれるなんて、素敵な職場ですね」など、好意的に受け止めてくださってる方が9割でした。残り1割の方は「子連れ出社よりもお休みをとらせてあげたほうがいいんじゃないか」「会社内に託児所を作ったほうがいいんじゃないか」という意見もいただきました。

 

── 報道局はとても忙しそうです。仕事を休むことも考えたのでしょうか?

 

財津さん:今回、午前中の仕事で、子ども本人は元気だったため、私が仕事を休んでほかの方に生放送をお願いするよりも45分だけ子どもを見ていてもらったほうが、仕事がうまく回るだろうと自分で希望して連れて行き、午後は半休をとりました。夕方の放送は本当に忙しいので、その場合は連れて行かず半休を取ります。

 

── 今後、同じような状況になったら?

 

財津さん:実は、子連れ出社をした翌週にも同じようなことがありました。でも、そのときは連れて行かなくてもよくなりましたが、また同じことがあれば職場に連れてくると思います。ただ、午後の放送だったらお休みを取ります。

 

── Twitterに投稿したことで何か変化はありましたか?

 

財津さん:今度産休に入る女性がいて、みんなで「彼女が戻ってくるときには託児所を作りましょうよ」という話になりました。ほかの女性社員からも「ツイッターを見ました。本当に託児所ができてほしいですよね」と声をかけていただきました。これを機に、FBS含めて、社会全体に託児機能が充実するにはどうしたらいいか、会社のみんなとも考えていきたいと思います。

 

PROFILE 財津ひろみさん

福岡県久留米市出身。福岡放送のアナウンサー。現在1歳7か月になる男の子と女の子の双子育児に奮闘中。四季や自然を感じる旅行や温泉にでかけ、土地の魅力を知ることが好き。

 

取材・文/間野由利子