「それはさすがに…」と、最近受けた相談内容を明かしてくれた、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。2万4000件の家計相談を受けてきたなかでも、解決策の言葉につまった事例があるといいます。どんな相談だったのでしょうか。

 

高収入なのに「お金が貯まらない」その意外な理由とは

月収80万円あって貯金できない“ふつう”の夫婦

私たちは家計相談をメインの業務として、2万4000件以上のお客様と面談を行ってきました。家計状況に耳を傾け、改善に向けてサポートするわけですが、夫婦の一方に問題があって頭を悩ますケースがよくあります。なかでも記憶に残っている2組の例を紹介しましょう。

 

1組目は年収は高いのになぜか貯まらない30代夫婦の例です。ご主人の月収は80万円台。妻は専業主婦で小学生のお子さんがひとりいます。一般のサラリーマン家庭と比べると裕福な世帯といえるでしょう。

 

相談者はご主人でした。妻に任せている家計収支が毎月ほぼプラスマイナスゼロ。そのため、給与からは貯金に回せず、ボーナスしか貯金できない状況にありました。ご主人いわく、「これだけの月収で、なんでボーナスだけしか貯められないの?」「毎月の生活費って、そんなにかかるの?」という言い分です。

 

対して、妻は意に介さない様子。「ボーナスで貯められているからいいでしょ」「毎月の生活費でいろいろとかかるのよ」などと話していました。年収が高い世帯は総じて生活レベルも高く、やりくり下手の傾向があります。結果、貯金は意外にも少ない。このご夫婦の場合も貯金は300万円程度でした。世帯年収を考えればもっとあってもおかしくありません。

 

気になるのは支出の「中身」でしょう。固定費の家賃30万円に次いで多かった費目が食費で月20万円以上。あきらかに使いすぎです。家計の浪費度をもっとも如実に表すのが、変動費の食費になります。家計に余裕があると、食費の管理が緩くなりがちです。食費の目安は手取り月収30万円程度で、夫婦と小学生の子ども1人の世帯の場合、18~20%程度(外食費含む)。収入が多くなれば15%程度に抑えるのが、家計をうまくコントロールするコツです。

 

加えて、教育費の問題も火種となっていました。子どもを中学から私立に行かせるのが妻の願いでした。周りがみな受験をしているなかで、「当然うちの子も…」と考えていたのです。私立中学の学費は年間で約100万円以上かかると言われています。それでも世帯年収が高いため、ふつうなら無謀な選択ではありません。

 

しかし毎月の収支がゼロの状況ではどう考えても難しい。妻が働けば話は変わってくるのですが、「私が働く選択肢もあるの?」と、言わんばかりの様子で不機嫌に。家計をやりくりすれば私立に行かせることは可能です。前述したボーナス時のみの貯金も解消され、毎月の給料から貯められるようになるはずです。

 

でも、夫は「そうしてほしい」と妻に強く言えない。かといって、FPの私たちにその役割を求めているわけでもなさそうで…。平行線をたどる家計相談でしたが、浪費妻を許してしまっていることがいちばんの問題だと言わざるを得ないでしょう。

節約を嫌う公務員の夫「うまく説得するには」

2組目は堅物夫と倹約妻の40代夫婦です。夫が国家公務員で専業主婦の妻がひとりで相談に来られて、不安な気持ちを打ち明けられました。

 

国家公務員でもいまの状況がずっと続くとは限りません。身体を壊したりすれば失職の可能性もあり、節約を心がけて蓄えを少しでも増やしておきたいのが妻の考え。また、年金生活を見据えていて、老後は必然的に生活の縮小を余儀なくされるため、いまのうちから家計支出を抑えておきたい考えもお持ちでした。

 

私たちは妻の意見に賛同しました。しかし、肝心の夫がいっさい耳を傾けてくれないといいます。「国家公務員だから心配する必要はない」「節約なんて無意味」「生活レベルは下げようと思えばいつでも下げられる」といった感じだそうです。家庭の状況は違うにせよ、節約や老後資金の貯蓄に対して、パートナーが協力してくれない悩みを抱える人は多いのではないでしょうか。

 

どうにか夫にわかってほしいと願う妻に、私たちは次のようにアドバイスしました。

 

「いきなり節約を強制してもうまくはいきません。まずは、節約の効果を先に理解してもらう必要があります」と。そして、節約で生まれた余裕資金を積み立て投資に回した場合、数年後に資金がいくらになるというシミュレーションを見せます。節約の先にある「お金の増加」を目にしたら、節約や投資に興味を示すものです。

 

また、ふつうに貯金をしていたのではインフレに負けてしまう、2024年から新型NISAが始まるので投資に挑戦するチャンスかも、などと“時事的な話題”を織り交ぜるのも効果的といえます。ニュースなどへの関心は高いからです。

 

夫婦の形はさまざま。ときには厳しく接し、またあるときは寄り添うことで二人三脚の貯蓄パワーを生むことにつながっていくでしょう。


監修/横山光昭 取材・構成/百瀬康司 イラスト/村林タカノブ