「損しそう」とふるさと納税を敬遠している夫婦も…本当に正しく理解していますか?

知っているようで知らないマネーの知識は意外と多いもの。間違った認識が家計にとって損となるなら、正しく理解しておく必要が。家計再生コンサルタントの横山光昭さんが、誤解をなくすことで得するお金の情報を解説します。

堅実で得する保険?正しい理解が必要です

私たちが日々行っている家計相談の場での話です。お金のプロからしたら当然のアドバイスでも、お客様には「そうなんですか!」「知りませんでした」などとよく驚かれます。たとえば、「貯蓄型の保険」に加入されていたお客様のケース。お客様は貯蓄と保障を兼ね備えている点と、解約時には払い込んだ保険料の総額以上の返戻金を得られる点に魅力を感じていました。

 

しかし、私たちのとらえ方は180度違います。お客様が魅力と考える点こそ商品上の問題といえるのです。貯蓄と保障を兼ね備える保険はいっけんよさそうに見えますが、「増える」かと言われるとそうではありません。なぜなら払い込んだ保険料のすべてが貯まっているわけではなく、保険料の一部は「保障部分」に充てられているからです。

 

たとえば、とある商品では10年間の払込保険料の総額が約163万円で、25年後の解約返戻金は約172万円になります。返戻率は約105%。単純に利回りを計算すると年利0.2%(単利)の計算に。「貯める目的」として使う金融商品としては、普通預金や定期預金よりは良いかもしれませんが、投資と比較すると「増えない」と言わざるを得ません。

 

にもかかわらず魅力に感じてしまうのは、予定利率に対する誤解があるからでしょう。予定利率とは、契約者の支払った保険料を保険会社がどのくらいの利率で運用できるかを予定し、契約者に約束する運用利回りのこと。保険会社は払い込まれた保険料の一部を株や債券などで運用し、保険金や給付金の支払いを行います。

 

ひと昔前は予定利率の数値が5%を超えた時代もありましたが、いまは1%程度と低迷しています。この予定利率を「金利」と勘違いしている人が多い印象です。前述の計算で年利0.2%の数字がはじき出されていることからも、予定利率=金利ではないことがわかります。

 

その現実をお客様に伝えたときは、「えっ」と絶句されていました。ですから私たちは、貯蓄と保障を兼ね備えた保険を貯める商品としてはおススメしません。貯蓄は積み立てNISAなどの運用商品で行い、保障は必要な分だけを保険で賄う、と分けたほうが高いパフォーマンスが期待でき、コストも少なくてすむからです。

「損しそう」ふるさと納税を敬遠する夫婦も

ふるさと納税も誤解しているお客様が多いですね。ふるさと納税は、自分の故郷や応援したい自治体などへ寄付を行う制度です。寄付した金額の総額から2000円を差し引いた額が税金の控除対象となり、実質2000円の負担で寄付額の30%以内の返礼品(地場の特産品など)をもらえるのが魅力とされています(控除上限額は年収や家族構成などによって異なります)。

 

それをお客様によっては、ふるさと納税サイトで紹介する特産品ごとの寄付額をそのものの販売値段と見誤っていたり、税金の控除を考えず「寄付額の30%しか戻ってこない」と早合点したり。結果、利用を敬遠している方がいます。正しく理解すればふるさと納税は非常にお得な制度なので、活用しないのはもったいない。

 

そのほか、格安スマホの利用でスマホ料金を月々1000円台にできることや、iDeCoの掛金全額が税金の控除対象になることなど、お客様の誤解から利用に至っていないサービスはまだたくさんあります。マネーの知識を正しくインプットして、賢く利用しましょう!


監修/横山光昭 取材・構成/百瀬康司 イラスト/村林タカノブ