義両親からどんな呼び方をされていますか。「さん」づけ、「ねぇ」扱いされたり、“呼び捨て”されるケースも。呼び名でザワザワする女性たちの声に耳を傾けました。
「ねぇ」「ちょっと」と呼ばれる女性のモヤモヤ
結婚以来、夫の両親から一度も「名前」で呼ばれたことがないと話す女性がいます。結婚して5年、夫の実家近くに住んでいるマミさん(39歳、仮名=以下同)です。
「共働きなので、4歳になる娘の面倒を見てもらうこともあります。義母は元教員で、“孫だから”と、猫かわいがりするわけではなく信頼しています。私の仕事が遅くなって保育園に迎えに行ってもらったときは、後日、義母の好きな和菓子を買っていくなど私も気を配ってはいるし、義母も喜んでくれます。でも、名前は呼んでくれないんですよね…」
いつも、「ねえ」「ちょっとちょっと」などと言われて、「はい?」と返事をするような関係だとか。夫に相談すると、「たまたまじゃない?」「悪気はないと思うよ」と、意に介さない様子。
「だからといって、とりあえずいい関係なのに波風を起こす感じで『名前で呼んでください』とも言いづらくて。そこまで気にしないときもあって、気づけば5年経ってしまった感じです」
それでも、心のなかではモヤモヤしたものを抱えているとマミさんは言います。「名前を呼ばれない」というのは、「存在を認めてもらっていない」気がするから。
「義父はどうかというと、ちょっと変わった人で…。モラハラっぽいところがあって義母とも仲はよくないんです。誰に対しても“おまえ”なんですよ。義母にも、私にも『おい、おまえ』ですから。私の夫はそれが嫌だったのか、『おまえ』とは言いません。夫が自分の親をどう思っているのか話してくれないのですが、近い距離にある実家にあまり行こうとしないのは、何か傷を抱えているのかもしれません」
距離を縮めるつもりはないものの、義母には「名前くらい呼んでくれてもいいのに」と思い、義父には「あなたに『おまえ』呼ばわりされたくない」と感じることが多々あるそうです。
「呼び捨て」されて不満がたまる女性も…
名前は呼ばれるものの、それが呼び捨てでつらいと嘆く女性もいます。
「私はずっと親から、“ちゃん”づけで呼ばれていました。カナコちゃんって。でも義両親は呼び捨て。結婚前は“さん”づけでしたが、新婚旅行から帰って挨拶に行ったら、『ほらカナコ、ちょっと手伝って』と義母に言われてびっくり。義父も『カナコはもうお客さんじゃないんだから』と言われて、挨拶に行っただけなのにいきなり換気扇の掃除までさせられて…」
本当は妊娠したら退職するつもりだったカナコさん(43歳、仮名=以下同)でしたが、近所に住む義両親に何をさせられるかわからないと、仕事を続けることに。現在は結婚して13年、いまでは11歳と9歳の子がいますが、いまだに義父母は呼び捨てだそう。
「以前、夫に『せめて、ちゃんづけにならないかな?』と言ったら、『親が子どもを呼び捨てにするのは当たり前だよ』と。いや、私は他人なんだけど!とケンカに。夫は子どもたちを呼び捨てして、私は“ちゃん”づけ。甘いと言われるかもしれないけれど、人前では呼び捨てにしていますし、家庭内ではちゃんづけでもいいんじゃないかと思っています」
子は親の所有物ではないから、呼び捨てにはしたくないと話すカナコさん。「親は子に対して社会的な大人にしていく責任がある」からこそ、「呼び捨てでいい」と言う夫との間に、埋めようのないものを感じるそうです。
「もし将来、長男が結婚しても、私は彼の妻を“嫁”とは思わないし、敬意をもって“さん”をつけて呼ぶと思います。相手が誰でも最低限の敬意を払う必要があります。だから夫の両親に呼び捨てにされるのが不快なんです」
とはいえ、話し合って解決する問題でもなさそうで、心理的距離が近いわけでもありません。だから「なるべく会わないようにするのが防御策」と、カナコさんは苦笑しました。
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里